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がん医療フォーラム 香川 2018 がんになっても幸せに暮らそう~ちゃんと決めまい自分のこと~
【第1部 基調講演】がん患者さんが住み慣れた場所で過ごすために

がんに人生を台無しにされないための大事なお話 -Advanced Care Planning-
辻 晃仁さん(香川大学医学部臨床腫瘍学講座 教授)

辻 晃仁さん写真
辻 晃仁さん

がんになったら、どうするか

私は腫瘍内科の医師です。「腫瘍内科」とは何かよくわからない方もいらっしゃるかもしれません、内科の中で腫瘍を中心に診ている医師だと思ってください。普通の内科の先生とあまり変わりませんが、少しだけ専門的にがんの患者さんを診療としています。「Advance Care Planning」という言葉は聞いたことがない人がほとんどではないかなと思います。でも実は難しい話ではなくて、「がんになってどうする?どうしたいのかな?」ということがACPです。今日はこのACPを中心に話をさせていただきます。

がんになりにくくなる予防と検診のお話

がんにかかる方は増えています、がんで亡くなる方も増えています。という話をすると、「なんだ、医学ってちっとも進んでいないのか」と思いますよね。ところがそうではないのです。他の病気で亡くならなくなり高齢化が進むと、がんにかかりやすい方が増える。その結果、がんにかかる高齢者が増えているということなのです。

じつは、がんの死亡率は高齢化の影響を除くと1990年代をピークに徐々に下がっています。診断や治療の進歩もあり、がんで亡くなる方は減ってきています。香川県ではがんで困る方がいなくなるようにしたいと思っています。というのも早期のうちに見つければ、がんは治せます。がんにならないことにくわえて、がんを早く見つけることもとても大事です。

進行がんになってがんが見つかることのないようにするために大事なことは「がん検診」です。症状があって調子が悪いから行く、というのは検診になりません。症状が出る前に、面倒かもしれませんが「がん検診の案内が来たから受けに行こうか」、これが検診です。症状が出る前に、定期的にがん検診を受けていただければ早期の治せるがんを見つけられます。

がんの予防は生活習慣病の予防法とほぼ一緒です。元気で長生きするためには、生活習慣病にならないよう生活に気をつけましょう。がんにもなりにくくなりますので、一石二鳥です。ぜひ頑張りましょう。

がんになっても、相談できます・・・仕事のこと、心のこと

「がんになった、だから仕事を辞めてきた」と来院される方がいらっしゃいます。絶対にあわてて、辞めないでください。辞めるのはいつでもできますが、一旦辞めてしまうと元に戻れなくなります。

まず、主治医に相談していただき、少なくとも「仕事を辞めた方がいいですか」といった相談をしていただくといいと思います。さらにがん診療連携拠点病院には「がん相談支援センター外部リンク」がありますので、こちらでも相談ができます。休職の後、職場復帰もできる制度も整備されています。辞めたあとに復帰するのは非常に大変ですので、できればやめずに、一時休んで、その後また復職する、ということをお勧めします。

とはいっても、「がん」と聞くとショックですよね。ぜひ、私たちに相談してください。いろいろ助けられることがあります。何でも対応できるわけではありませんが、少なくともその時点のベストの方法を提案できます。「どうしたらいいと思いますか」と相談していただけたら、私たちもしっかりサポートできます。

まず、がんのことをよく知りましょう。敵を知らないと勝てない、とも言われます。まず、がんのことをよく知っていただき、それからがんに立ち向かうことが大切だと思います。

がん治療の進歩

がんの治療は、最近どんどん進歩してきました。手術や放射線治療を安全に行うことができるようになりましたし、再発する危険性に対しては再発を防ぐための抗がん剤、それもよく効く薬が開発されてきています。さらに抗がん剤の副作用を抑える治療も進歩してきました。 進行した状態のため手術で完治できない場合でも、がんを小さくする治療やがんによる痛みやつらさを和らげる治療も進歩してきました。完治できないと言われたがんも、治るという方も少しずつ増えてきています。これらの治療は普段の生活を続けながら、受けられるになりました。つらいけど家族みんなにもサポートいただくことで、いい結果がでるのではないかと思います。

最近は、新しい薬が次々と開発されました。効果が高くなっただけでなく、がんの治療に伴う副作用を抑える薬も非常に進歩してきました。かつては、抗がん剤治療は吐き気と嘔吐がひどく、つらく苦しいものだったのが、最近は患者さんがつらい思いをされることは本当に少なくなりました。自分の生活を続けながら、治療できるようになってきています。
講演の様子写真
講演の様子

「Advance Care Planning」とは

では具体的に、がんになったら、どうしたらいいのでしょうか。ここからが、がんに人生を台無しにされないためのお話になってきます。「Advance Care Planning」というのは、「今後の治療、療養について、患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合うこと」。治療とか、今後のことを話し合うというのは、冷静に話し合えるような状況でなければいけないし、将来に希望が持てる状態ではないと話し合いにならないと思います。

「かわいそうだから本人には言わない」といわれることもありますが、本人に言わなかったら話し合いがはじめられません。何も言ってもらえないから、本人は不安で不信感を抱きます。「最初は入院で治療をしよう」と思っていても、「長く治療を続ける場合はどうするのか」、こういったこともやはり本人を含めた話し合いが必要です。

がんであることを隠していても、いつかはわかってしまいます。「なんで早く教えてくれなかったのか」「どうして嘘をついていたのか」、とご本人が考えることは避けられません。こうなると、患者さんは家族とも、医療関係者とも信頼関係がなくなって、誰も信じられる人がいなくなりとてもつらいことになります。もちろん家族も、医療従事者もつらいと思います。これからは、ご本人さん、ご家族さんみんなで、がんのことをしっかり聞いて最良の治療、ベストな治療を選んでいただきたいと思います。信頼ができる医師のもとで治療をしていただきたいですし、体調を整えながら治療を行い、今のままの生活を3年、5年、10年、と長く、仕事も趣味も続けたいという希望を持っていただき、それを達成するための計画が「Advance Care Planning」なんです。「できたら最期まで家に居たいな」そういうことも含めてお話ができると、非常にいい治療が受けられると思います。

はじめにお話をして、最後のことまである程度決めていても、次のときにはいい薬ができていて、「治るかもしれない」といううれしい話ができることもあります。節目節目でそのたびに話し合いをもって、プランの変更をしていくということも大事だと思います。

がんの治療と緩和ケア

がんの治療は、3大治療(手術、放射線治療、抗がん剤治療)、そして緩和ケアです。抗がん剤は副作用が強く、効果もいまひとつの時期がありました。ところが最近は薬がどんどんできてきて「分子標的治療薬」や、「免疫チェックポイント阻害薬」など画期的な効果を持つお薬も使えるようになりました。

緩和医療も普及しています。以前はご家族に「もう緩和医療です」と言うと、「先生は私の家族を見捨てるのですか」と言われることもあったのですが、最近は、患者さんや家族の方から「先生、これからは緩和医療主体でお願いします」と発現されることも増えてきました。緩和医療のイメージが変わったことと、緩和医療の内容のことまで、理解が広がってきたのではないかと思います。

抗がん剤・手術・放射線による治療は「攻め」の治療、緩和医療というのは「守り」の治療です。攻めるのも、守るのも、両方得意なことが大切なのです。体調がすぐれなければ先に緩和を主体にした医療を行いがんから身を守り、体調が良くなったら抗がん剤をやってがんを攻める、ということもできるようになりました。

また新しいところではロボットが手術を手伝ってくれるようになったのはご存じですよね。2018年の春にロボット手術の適応が大きく広がります。これも楽しみな治療だと思っています。

抗がん剤治療(薬物療法)の最近の状況

私はその中で、イメージが悪いといわれる抗がん剤治療(薬物療法)を担当していますが、そもそもなぜ抗がん剤治療のイメージが悪いのか、まず知っていただこうと思います。抗がん剤は、最初は毒ガスから作られました。第二次世界大戦のさなか、イタリアで毒ガスを積んだ船が沈められ、その船を調べに行ったアメリカ軍の潜水夫さんの白血球が減ったということから、白血球が増える病気である白血病の治療に役立つかもしれないと米国に運ばれ、悪性リンパ腫というがんの治療に使える「ナイトロジェンマスタード」が開発されたのが抗がん剤治療のはじまりです。このあとさまざまな種類の抗がん剤が開発されましたが、当初は抗がん剤治療は厳しい状況でした。というのも副作用を抑える薬がなかったのです。近年になって、吐き気を抑える薬や、白血球(好中球)をふやす薬が開発され、抗がん剤が安全に、つらくなく使えるようになりました。

信頼できない健康情報を見分けるには

よくあるのは、1万円するお水を飲んだらがんが消えるとか、このサプリをのんでいると副作用が出ないとか、そういう「ウソの話」があります。信頼できない健康情報の見分け方を「ガセネタかな」ということで覚えておくと良いでしょう。

「(ガ)学会で発表しました」よく宣伝で用いられますが、学会では結果が悪くても発表はできますから信頼できるかどうかわかりません。
「(セ)成分も」特定の成分を強調する広告を目にすることがありますが、ひとつの成分だけで、よくなったり悪くなったりする話ではありません。いろいろな組み合わせで考えなければいけません。
「(ネ)ネズミの実験で効いた」動物実験の結果はヒトに当てはまるとは限りません。効果も副作用も実際の患者さんで検証したものでなければ、「効く」とはいえません。
「(タ)体験談ばかり」というのも、考えものです。「元気になりました」という体験談が、実は他の治療が主体に行われ元気になったのに、たまたま一緒に使っていたものがよく聞いたように広告に使われていることもよくあります。

また「完治する」とか「何にでも効く」というのは、「必ず儲かる株の話」と同じで常識的にありえませんので、ぜひ注意していただきたいと思います。

セカンドオピニオンを活用する

「標準治療」といわれるのは現時点でのベストの治療です。まずこれがお勧めできます。一方、高度先進医療とか、未承認の治療というと、いいものかどうかその時点ではまだはっきりと評価が定まっていないものです。本当にそれがその人に向いているかは、専門医と話し合ってから決めてほしいと思っています。ぜひ「セカンドオピニオン」を受けてみてください。「セカンドオピニオンを受けるのは、主治医の先生に申し訳ないかもしれない」と思われるかもしれませんが、大丈夫です。少なくとも、今日このフォーラムに参加しているような先生は、皆さんウェルカムで紹介状を書いてくださると思いますので、大丈夫だと思います。

個別化医療の可能性

「効く薬」を遺伝子の検査で選べるようになってきました。例えば「クリゾチニブ」という、非小細胞肺がんの薬があります。治療の前に遺伝子の異常「ALK融合遺伝子」があるかどうかを調べて、「陽性」ということがわかったら、この薬はとてもよく効きます。ところが、このALK融合遺伝子が陽性の人は、日本の肺がんの人の中で、2~3%しかいません。ほとんどの人にとっては効かない薬が、この遺伝子であるかないかによって、効くか効かないがわかります。遺伝子の検査があるからこそ、この薬が特効薬になったわけです。冷静にがんの状態と、特徴を調べた上で、1~2週間検査の期間はかかりますが、効果のある治療をお勧めできるといいと思っています。

一方で、がんの治療薬のなかには高価な薬もあります。しっかり調べて、一番いい治療をしてもらうことが大事だと思います。遺伝子(ゲノム)を調べる検査ができるようになってきていますが、現状では検査費用は高額です。「臨床試験」や「研究」の枠組みでより低額で検査ができる場合があります。国内では「SCRUM-JAPAN」や「LC-SCRUM」「GI-SCREEN」などの研究グループがあります。主治医に相談すると、検査ができるか、検査の結果どのような薬が効くかといったことを調べて、効く可能性がある臨床試験に参加していただくという取り組みが広がってきています。

免疫チェックポイント阻害薬という新しいメカニズムの薬も出てきました。肺がんでこの薬が、あるタイプの人に良く効くことがわかってきました。いろいろな種類のがんで、新しい薬が開発途中であったり、臨床の場に出る直前であったりという状況で、新しい選択肢も増えてきています。

話し合って、相談しながら自分らしく過ごす

「Advance Care Planning」で話し合って、相談していくうちに「今はこれが一番いいよ」というお話ができて、よく効く治療に出会い、治療予定の変更があるかもしれません。こうなることは本当にうれしいことです。このためには、いつものあなたなら惑わされるはずのないような噂話や根拠のない話に振り回されて、人生を台無しにされてはいけないと思います。やはりいい治療を受けて、最良の結果を出すように。できれば今までの生活を何にも変えずに、週に1回病院に行くことになったけど、それ以外は普段と変わらずに生活できます、というように、がんの治療を受けていただけたらうれしいと思っています。
皆さん、一緒にがんに立ち向かいましょう。

掲載日:2018年5月14日
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