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北見地域のがん患者さん支援の充実に向けたセミナー 2023
【実践報告】
ゴールデンウィーク中の麻薬持続注射患者への取り組み

矢作 徹さん(ミント調剤薬局 薬剤師)
講演の画面01

ミント調剤薬局の矢作と申します。よろしくお願いします。
薬局紹介です。薬剤師は13名います。

「PCAポンプ」を使用した医療用麻薬の持続投与が普及

近年、患者さんの苦痛を取り除く方法として、「PCA(Patient controlled analgesia:自己調節鎮痛法)ポンプ」を使用した医療用麻薬の持続投与の普及が進んでいます。「疼痛(とうつう)時や必要時に患者さん自身または介護者が即座に投与できる」「経口投与より迅速な疼痛管理ができる」「嚥下(えんげ)能力が低下している患者さんに対しても使用できる」など、さまざまなメリットがあります。終末期がん患者さんの疼痛管理に対して大変有用であり、QOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活の質)の向上に大きく関与していると考えています。

講演の画面02

当薬局は、北海道と北海道薬剤師会より在宅医療に対応できるオホーツク地域の基幹薬局に選定され、平成24(2012)年にクリーンルームが整備されました。令和4(2022)年10月1日から令和5(2023)年3月末までの6か月間では、使用件数は76件、患者数は33人でした。月平均にすると使用件数は12.6件、患者数は5.5人でした。
しかし、ゴールデンウィーク直前の4月になると、患者数、使用件数は急増しました。連休による家族の帰省や患者さんの希望などが要因になっていると思われます。5月も患者数が多い状態が続きましたが、6月に入り患者数は減少しました。

講演の画面03

代表的なPCAポンプについて紹介します。シリンジポンプ型と機械式PCAポンプがあります。薬局ではクリーンルームにて、赤い矢印で示しているシリンジやカセットへ医療用麻薬の充塡をし、訪問看護師へお渡ししています。
シリンジポンプ型では10mLシリンジを使用します。機械式PCAポンプでは100mLカセットへの充塡が多いですが、最大で250mLカセットへ充塡することも可能です。

講演の画面04

2023年のゴールデンウィーク前後のカレンダーです。5月1日は休日体制でした。4月19日時点で11名の麻薬持続注射施用患者さんがいて、過去最高の人数でした。7月現在は1名となっています。

必要な情報の一覧表を作成しスケジュールなどを把握

薬局では、使用薬剤、使用量、使用機材、医療用麻薬の処方予定日、交換予定日などを把握するために一覧表を作成しました。対応している訪問看護ステーションは6施設に及んでいるため、訪問看護ステーションごとにまとめています。訪問看護師に渡す時には、体調やレスキュー(疼痛管理において、徐放性製剤に追加して即効性の高い速放性製剤を投与すること)使用回数の変化、交換予定日などの情報を聴取しました。

講演の画面05

こちらに一覧表の記入内容を一部抜粋しました。1の患者さんでは1回の処方で20A処方されるため、不足しないように在庫管理しました。5の患者さんでは一日のレスキュー回数が8~10回と多かったため、備考欄に記載し、次回交換予定日を推測していました。8の患者さんは連休中に交換する可能性があったため、交換予定日とその処方日を記載してスケジュールを把握していたケースです。
容体悪化によりレスキュー使用回数が急増する可能性があるため、土日を含めた連休中に施用する麻薬残量がなくならないよう、日数に余裕を持って処方してもらうようにお願いしています。

結果です。連休中に麻薬残量がなくなるケースはありませんでした。ゴールデンウィークの対応例として、ナルベイン注3A、これは6mLですけれども、流量0.1mL/hの処方が5月2日にありました。
訪問看護師へ処方量と交換予定日を確認したところ、「当日午後に交換予定」と返答があったため、疑義照会(処方箋の内容について、発行した医師に問い合わせること)をして6Aへ変更となりました。普段から訪問看護師へ連絡していたことで、処方量について迅速に対応できたと思います。

情報の把握により訪問看護師や病院に積極的な提案が可能に

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考察です。一覧表を作成したことで個別の具体的な情報を把握でき、訪問看護師や病院に積極的な提案ができました。無菌調製は投薬までに薬品名、規格や数量、調製後の全量などを複数の薬剤師で確認しており、調剤ミスがないように対応しているため、「休日呼び出しでの麻薬持続注射の無菌調製は1人での作業となりリスクが高い」とさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。

関:矢作さん、ありがとうございました。それでは、最後の報告になります。「ケアマネジメントにおけるがん患者さん支援の課題と工夫」、介護支援センターさくら、主任介護支援専門員の林大輔さんからお願いいたします。

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掲載日:2023年11月13日
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