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地域で取り組むがん患者支援 がん医療従事者研修会 広島 2023
広島県のがん患者さん支援の充実に向けて

渡邊 清高さん(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科)

篠崎先生、ご紹介いただきましてありがとうございます。
ただ今ご紹介いただきましたとおり、私自身は、国立がん研究センターで、がん対策ということで、がん患者さんへの情報発信をさせていただいたご縁で、初めに県立広島病院に伺ったのは、もう15年近く前になります。今日は大変暑い中ですが、熱い議論がご一緒できるのを楽しみにしてまいりました。また、今回は、県立広島病院病院長の板本敏行先生をはじめ、多くの関係の皆さま方にお声掛けいただきまして、このような機会をご一緒できることを楽しみにしております。

オンラインでも今日はすでに80人ぐらいの方にアクセスをしていただいているということで、ぜひディスカッションができればと思っております。私は、研修会というのはざっくばらんに意見交換をする場だと思っていますので、ぜひ皆さま方と広島県の現状をご一緒させていただいて、これからどのようなことができそうかというところが共有できればよいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

私自身は、こういった進行の中で、最初に少し「問題提起」といいますか、がんを患った患者さんをサポートする仕組みが、今、どの程度動いているのかということについて、総論的なお話をさせていただいて、先ほど篠崎先生からもご紹介いただきました、広島県のがんサポートブック『がん患者さんとご家族のためのサポートブックひろしま』をつくっていらっしゃる様子も見ながら、私自身感じたことも少し振り返らせていただこうと思っています。

今日は県の健康づくり推進課の西岡さんからもお話しいただきますし、がん相談支援センターの橋本さんからもがんの相談についてお話しいただけるということで、これから地域で、広島県で暮らす患者さん、ご家族をどのように支えていくかというところのやりとりが、少しでも活発になるようなお話ができればよいと考えております。

研修会の目標

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今日の研修会の目標として、「支援の現状と課題を考える」ということ、そして、「患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活の質)を向上するということと、支援を充実するための活動の事例をぜひ共有」できればと思っておりますし、「多職種で、チームでかかわるチームアプローチが非常に重要」になっています。

特にがん医療以外のところでは、例えば療養や緩和ケア、今日も県立広島病院の緩和ケア病棟を見学させていただいたのですけれども、本当にいろいろな職種の方がいろいろなタイミングで、患者さん、ご家族にかかわっていらっしゃる様子を、スタッフの方からも、あるいは施設の構造からも感じ取ることができました。そういったところについても、ぜひ議論ができればと思っております。

がんの現状

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これはよくがんを語る時に紹介される数字ですが、1981(昭和56)年に、日本人の死因第1位が悪性新生物、がんということになっております。高齢化が進むとともに、その数は年々増えてきていて、最近のデータでは、年間38万人の方ががんで亡くなっていて、99万人の方が新しくがんと診断されているといった状況です。

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2人に1人ががんにかかるということが、「生涯累積罹患(りかん)リスク」という数字で表されますが、こちらで示しましたとおり、男性ですと一生のうちに65%が、女性ですと51%が、何らかのがんにかかるということが推計されているので、決して珍しい病気ではないということです。

一方で、最近のトピックとしては、診断と治療が進歩することによって、がんを患っても、すぐに生死に直結するということではなくて、治療を続けながら、あるいは再発の不安と向き合いながら過ごすということが多くなってきております。そういった方を「がんの経験者(サバイバー)」といいます。

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こちらの最新のデータですと、2011年~2013年の間に診断された方の生存率をお示ししたものですので、それこそ「免疫チェックポイント阻害薬(免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬、2014年に初めて承認された)」もまだ導入されていない頃ですので、おそらく現在診断されていらっしゃる方、今治療していらっしゃる方は、さらによい経過をたどっていらっしゃるといえると思います。

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こちらは「がん罹患数の将来推計」を示したものでありますが、すでにがん患者さんの3分の1以上は75歳以上の後期高齢者が占めていて、その数は、今後50%を超えることが見込まれております。つまり、1981年、日本人の死因第1位ががんになった頃と比べても、多くのがん患者さんが後期高齢者に差し掛かっているということは、何らかの併存疾患、例えば認知症や高血圧、脳血管疾患、腎臓病、呼吸器疾患などを患った中でがんを抱えるということも増えてくるということです。そういった中でどう支えていくかというところが重視されています。

「話し合う」医療とケア

治療の考え方としては、選択肢がそれほど多くなかったので、どちらかを選べばよかったということで、患者さんは受け身である程度困らなかったという時期から、これからは、治療や検査、その後のケアも含めて多くの選択肢があって、患者さんはそれぞれ優先順位を決めながら、医療者と話し合って医療やケアを進めていくということです。多くの情報源や選択肢があるなかで、「コミュニケーションと対話が鍵」といえると思います。

都道府県・地域におけるがん対策の役割

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こちらは「がん対策の歩み」になります。病院や診療所などを主体として行われてきたがん医療ですが、「国を挙げてがん対策をすべき」という声があがり、2006年の「がん対策基本法」で一つのかたちを結びました。その後、第4期の「がん対策推進基本計画」が2023年3月に策定されておりますが、そこでは「社会におけるがん」ということで、都道府県・地域における、患者さんをサポートする役割が、より明確に示されています。PDCAサイクルといって、改善のサイクルを回していくということが重視されています。

2016年に改正された「がん対策基本法」では、「病院が頑張る」「医療従事者が頑張る」ということではなくて、多くのステークホルダーが一丸となって、予防や医療、研究、患者さんの就労などの社会的な問題、そしてがん教育にかかわっていこう、というところが示されています。

2023年3月の「がん対策推進基本計画」では、「がん予防」「がん医療」「がんとの共生」、そして「これらを支える基盤」が示されています。今日主に話題にあがってくるのは、患者さんの社会的な問題への対策や、相談支援・情報提供ということが、「がんとの共生」という分野でも大きな柱として示されているということです。

広島県におけるがんの現状

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「広島県のがん患者さん支援の充実」ということですが、これは「広島県がん対策推進計画」によるものです。3月に国の計画が策定されていますので、令和5(2023)年度に県の「がん対策推進計画」も見直しがなされると伺っております。がんの現状としましては、全県的に同じような傾向ですが、年齢調整をすると、つまり高齢化の影響を取り除けば、全体的にがんで亡くなる方というのは減ってきています。一方で、女性は子宮頸(けい)がん、あるいは乳がんの影響もありまして横ばい、年によっては増加の年があるというのも、全国的に見られる傾向かと思います。
全国平均との比較ということで申し上げると、喫煙関連がんとしての肺がん、そして、肝炎ウイルス感染関連としての肝がんの死亡率が多いといえます。このように、地域ごとにがんの状況は変わってくるということです。

「がん医療・ケア、がん相談の質」を見える化する

これはあくまでも死亡という一つの指標を見た時の特徴ではありますが、がん患者さんの生活の質、人生の質、QOLを考える時に、何をもって「質の高い医療、相談対応、患者さん支援ができた」といえるかというのは、いろいろな見方があるかと思います。
質の高いがん相談が受けられればよいのではないか、治してくれる病院が多ければよいのではないか、あるいは近ければよいのではないかという考え方もあります。治療実績が豊富な病院がある地域がよいのか、通いやすいクリニックや在宅ケア施設につないでくれる、どのようなことでも答えてくれる、あるいは、最先端の治療を紹介してくれる、設備はきれいで待ち時間がなく対応してくれる、受け付けが丁寧など、患者さんが見る、医療に対するいろいろな期待や評価の目安というのが示されているわけです。

がん対策の中でも、「プロセスとアウトカムに注目しましょう」ということはよくいわれまして、これはがん対策に限らず、医療の機能評価などでもよくなされるものですが、プロセス指標、例えば「がん相談の対応件数」について、アウトカムでいえば、「患者さんとご家族のQOLの向上」ということになります。

プロセスということでいえば改善策と直結しやすい、つまり、相談件数で「何件対応した」というのは、活動が非常に見えやすいわけですが、患者さんからすると「相談件数が多い」というのは、本当にそれが解決に結び付いたのか、ただ回数が多いだけで、たらい回しにされているのではないかというような考え方もあります。最終的なアウトカムというのは、患者さんがどれだけ満足をしたか、納得をしたかということですが、こうしたことはなかなか目に見えにくい指標です。ただ、患者さんからすれば、やはり直接の結果ということですので、より望ましいということです。こういった指標が測定できるか、評価できるかということを組み合わせながら、がん患者さんへのサポートというのを考えていくわけです。

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患者さん・家族のニーズ、そして医療者のニーズとしては、それぞれどのようなものがあるのかを見極めた上で、医療従事者は知識をアップデートしたり、コミュニケーションスキルを向上させたり、いろいろな職種でアプローチをすることも重要です。アンケートや体験調査、患者報告アウトカム(PRO:Patient Reported Outcome)などでチェックをして、それを改善に役立てていく、こういったサイクルを回していくことも重要です。これはがん相談の一つの例ですが、患者さんの支援というところでも共通していえることかと思います。 今回の「がん対策推進基本計画」の中でも、医療従事者以外のさまざまなステークホルダーが、「社会的な課題を解決し、がん患者及びその家族等の『全人的な苦痛』の緩和を図る」と記載されています。つまり、病院から見れば、いろいろな立場の方と連携をしながら、病院でできることはもちろん自分たちでやるし、病院でできないことは、特にソーシャルキャピタルといわれる、住民の方や行政の方、介護職種の方などとうまく意思疎通をしながら、患者さんを点ではなくて面として支えていくということが、非常に重視されているといえます。

診断時からの緩和ケア

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これは「がんと診断された時からの緩和ケアの推進について」ということで、「がん対策推進基本計画」1期目から、「診断時の緩和ケア」というところがよく言及をされておりました。一般には、緩和ケアというと「末期の治療、終末期が近づいた時の介入」と考えられがちですが、特に心のケアや不安などに対して、あらゆる職種の方がかかわっていくイメージで示されていて、「基本的緩和ケア」は、がんに携わる全ての医療者が身に付けるべきものであるということで、「緩和ケア研修」というかたちで、多くの医療従事者に対して研修が実施されています。

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実際アウトカム指標はどうなのかということも、今回の「がん対策推進基本計画」に向けた議論の中で示されていて、「日常生活を送ることができている方」がおよそ7割、「病気や療養生活について相談できた方」が4分の3、「家族への相談支援が十分な方」は、成人で5割、小児で4割ということです。これを多いと見るか、まだまだこれからと見るのか、考え方はさまざまですが、こういった現状をまず把握していくことは重要ですし、これはあくまでも全国平均ですので、地域ごとの格差というのも、今後は見ていく必要があるのではないかと思っています。

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相談支援に関してもデータが取られていて、「がん相談支援センターを知っている方」はおよそ7割で、少しは増えていますがまだ少ない状況です。さらに、「がん相談支援センターを活用している割合」というと、もう少し減少してしまいます。「ピア・サポーター(当事者の視点で患者さんを支える支援者)について知っている方」が、およそ4分の1ということです。これも今後認知度が増えていくということと、活用されて患者さん・ご家族の不安に寄り添って解決をするというアウトカム指標まで考えていけば、より「ピア・サポーター」の有用性、あるいは普及にもつながってくると思います。

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精神的な苦痛、身体的な苦痛についても現状を把握されていて、これは遺族調査も含めたデータですが、およそ4割の方が何らかの苦痛を抱えているという結果が出ています。

患者さんを支える地域連携とは

「患者さんを支える地域連携」について考えていきたいと思います。これまでですと、診断時からではなくて終末期からの緩和ケアということであれば、ある意味、患者さんが病院から診療所に行く時に、ケアがいったん途切れたり、分断されたりということが起こり得た状況でした。これからは、がんを患いながら、治療、フォローアップ、あとは仕事の復帰や社会復帰、また、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング:今後の治療・療養について患者さん・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス)」というところもあれば、情報を共有しながら、診療所、病院、多くの患者さんにかかわる施設や人材が連携をして、並走しながら患者さんを支えていくことが重要視されてくると思います。

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2007年に策定された第1期の「がん対策推進基本計画」の中に、全ての患者さんが信頼できる情報を手に取れるように、「患者必携」を届けて、患者さんに質の高い情報をお届けして、患者さんが医療機関を受診する、あるいはこれから医療を受ける時に迷わないようにするということが、施策として書かれたということで、先ほど篠崎先生からご紹介いただいた、患者さんにぜひ手に取っていただきたい情報として、こういった文章をつくりました。ともすると、チーム医療や医療連携というと、患者さんの視点から見ると、たらい回しにされているのではないか、体よく病院から追い出されるのではないかと、少し警戒感を持たれる方も少なくない中で、「院内で・地域で患者さんを支えるためのチーム」ということを、患者さんにわかりやすい言葉でお示しできればということで、このような文章にしました。

それは患者さんがいる場所や状況によって、チームの編成というのは変わってくると思います。集学的な治療(複数の方法を組み合わせて行われる治療)であれば、手術、放射線治療、抗がん剤治療などからなる「病院内チーム」ですし、患者さんが入院から外来へシフトする、通院となると、在宅施設、あるいは訪問看護などを含めた「地域医療チーム」になりますし、「地域包括ケアチーム」となると、介護福祉の関係の方や行政、住民の方、近所の方も含めたチームといえます。

地域の療養資源の情報をまとめた「がんの療養情報」

先ほどご紹介いただいた『がん患者さんとご家族のためのサポートブックひろしま』は、先ほどのがん患者さんを支えるための『患者必携 がんになったら手にとるガイド』と、ぜひセットにして使っていただきたいと思って、提案をさせていただいたものです。国がつくった、あるいは東京でつくった、がんについての一般的な情報は役には立ちますが、では地元でどこに相談に行けばよいのか、どこにかかればよいのか、この書かれている、例えば費用の負担を軽減する制度やお金のことで相談できる制度について、がん相談支援センターなどどこに電話すればよいのかという時に、相談先が具体的に書かれている、そういったハンドブックを提案させていただいたところ、広島県で検討いただきました。

最新版が2020年版ですが、「相談窓口」「がん情報」「医療施設」「緩和ケア」「暮らしとお金」「支え合いの場」「問い合わせ先」ということで、改訂を重ねるにつれて、生活者の目線での、支え合いの場やお金のこと、医療以外の情報も含めて幅広い内容を掲載していただいています。こういった情報は、いろいろな地域の、ほかの県にも参考にしていただいたり、よりきめ細かく市区町村でも情報をつくったりというところにもつながっていて、毎回こういった改訂版ができるのを楽しみに拝見しています。

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こちらは1人の患者さんの例をあげてみます。高血圧、高脂血症にて治療中で、健康管理というよりは、ラーメンやお好み焼きが大好きな方です。最近少し体調が悪いということで、県立病院を受診したら胃がんと診断されて、手術と抗がん剤治療を受けました。「大変だったけれどこれで家に帰れる、一服したいし、しょっぱいものもそろそろ食べてみたい」ということですが、実際の患者さんの体験としては、治療が終わったらおしまいではなくて、治療の前からそのための準備というのもなされているわけですし、患者さんもそれを、少しずつ体を慣らしながら、受け入れながら、手術の前の準備をします。そして手術が終わったあとも、リハビリテーションを受けたり、減塩食に切り替えたり、また、たばこは卒業していただいて、ストレスコントロールをうまくやるというところがあるかと思います。

医療者のかかわりとしては、治療中だけではなくて、治療の前も、病状の理解の程度を確認しながらゴールを共有して治療に臨み、治療が終わってからも、副作用・後遺症のモニタリングやケアを行いながら、地域のあるいは地元のリソースとうまくつなげていく、何かあったら相談できるようなネットワークを組んでおくというところが必要になってきます。そのために、医療者としてどのような支援ができるかがポイントになってくるかと思います。

地域の情報づくりが住民の安心感へつながっていく

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そういった意味で、「地域で支える新しい医療のかたち」とお示しさせていただいたのですが、「情報をつくる」ことで、県の中の情報を「見える化」することができております。よりきめ細かく、在宅や緩和ケアについて具体的にリソースマップをつくっていらっしゃる自治体や、多くのモデルも、がん以外の領域も含めて参考にさせていただいております。そういった情報というのは、役立って、活用されて、これは役に立った、これはもう少し違う見え方があるとよいのではないかと、それこそPDCAを回しながら皆で支えて、情報が実際に役に立って、それがさらにまた次の情報に更新されていく、こういったサイクルがうまく回ることによって、情報もつくって、地域の住民の安心感や信頼感にもつながっていくというところが重要だと思います。

これからのことを考え、話し合い、納得する「アドバンス・ケア・プランニング」

そうした中で、これからのことを考える、話し合うところから、納得する、伝える、腑(ふ)に落ちるというところが、「アドバンス・ケア・プランニング」の重要なところだと思っています。それこそ話し合ったことで、例えば書面にまとめる、同意書をいただくというところで終わりがちなところがあって、これは私自身にとっての戒めでもありますが、実際に患者さんが納得しているのか、伝わって行動に結び付いていくのかというところが重要な部分かと思います。

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これは「ACP」の定義としてよく引用されているものですが、「今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス」と定義されています。その内容は、医療的なこともあれば、それ以外のことも含まれています。

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いろいろな病気について「予後予測モデル」というのが提唱されていて、一般的によくいわれるモデルというのは、がんというのは比較的ADL(Activities of Daily Living)、つまり日常生活の機能が保たれているけれども、終末期に近づくにつれて急速に低下すると考えられています。肺、慢性呼吸器疾患や心疾患などでは、増悪を繰り返しながら悪くなっていきます。認知症ですと、10年あるいは数十年単位をかけて、ゆっくりなだらかに下っていくというモデルが示されています。ただ、実際の患者さんは、さまざまな病態を複合的に抱えていることが一般的ですので、なかなかこのとおりにはいかないということがいえると思います。

そのような中で、ACPについて、総論的には理解もでき賛成だという意見もあれば、一方で、詳しく話し合っている方は、その中の一部にすぎないといったことがあります。なかなか自分ごととして捉えるのは難しい問題だと思っています。医療や施設・サービスなどについての情報を得たいというニーズも高い中で、当事者に寄り添う情報をどう伝えていくかということも重要になってくるかと思います。

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これは、看取りや終末期をどこで過ごすかを考える際に重視することについてアンケートをしたもので、日本だけではなくてアジア全体の傾向かもしれませんが、「家族への負担」を第一にあげる方がとても多いということがわかっています。

在宅療養をするがん患者さん向けサイト―ニーズの変化に合わせリニューアル予定―

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そうした中で、『患者必携 がんになったら手にとるガイド』は、主にがんと診断された時に役立つ情報ということでまとめさせていただいたのですが、在宅で過ごされる患者さん向けの情報をまとめたいということで、2015年に「がんの在宅療養」というサイトをまとめさせていただいております。これは冊子でも入手できますし、ホームページでもご覧いただけます。

この情報に関しては、在宅療養をするがん患者さん向けではありますが、2020年以降、新型コロナウイルス感染症のまん延があってから、在宅でどういうかかわりができるのかという情報は意外とないので、治療中の方で、「必ずしも看取りを目の前にしている状況ではないけれども、家族としてどういうサポートができるのか」「いざとなったら次の対応をどうすればよいのか」ということで、非がんの方もこのサイトに大変多くアクセスをいただいています。そのため、治療中の方や仕事を続けていらっしゃる方など、そういった方向けの情報を少し加えるかたちで、現在リニューアルプロジェクトを始めているところです。

ただ情報があるだけではなくて、やはりこういった研修会やフォーラムなどのかたちで現場や地域の皆さま方と交流をして「情報がなくて困った」「こんな情報があって役に立った」などの声をお伺いするようにしています。情報だけではなくて、それがきっかけで顔の見える関係ができる、ということがとても重要です。その地域に住まう患者さんやご家族を思い浮かべて、「次はうまくサポートできるとよい」「新型コロナがだいぶ落ち着いてきたので、対面の支援ができる」「今までのオンラインのツールも使ってサポートできるとよい」、そのような意見交換などをご一緒しております。

信頼できる情報の届け方、伝え方が大切

がんセンターでも、今の在宅の情報をつくっていても感じたことですが、内容に関してお伺いをすると、「役に立った」「参考になった」と、結構ポジティブなご意見も多いのですが、一方で、「どこにその情報が置いてあるか」「どうやってその情報を紹介されたか」という状況、場が非常に重要だということを、大変強調しておっしゃる方が多くいらっしゃいました。 例えば、県立広島病院の1階のがん相談支援センターには、「がんの冊子」といって、がんの種類ごとの冊子や、緩和ケア、口腔(こうくう)ケアなどという、さまざまな話題の冊子が置いてあります。お近くのがん診療連携拠点病院に置いてあるし、主治医の先生、あるいは看護師さん、相談員の方から冊子を薦められることによって、安心してその情報を手に取れる、活用できるということで、情報がある場所というのも非常に重要だと教えていただきました。

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これは「在宅がんウィット」といって、患者さんのよくある悩みや不安、お問い合わせをFAQ(よくある質問)と答えというかたちでまとめさせていただいたサイトです。新型コロナウイルス感染症をきっかけに多くの項目をつくって、今も少しずつ項目を増やしているところですが、いわゆるお客さん相談窓口、クレーム発生、といった場合のお問い合わせは、本に向かわずインターネットに向かうことが多いです。したがって、困ったとき・悩んだときにぜひ知っていただきたい情報や、ほかの方が困っている情報を共有することも、役に立つのではないかということで、こういったサイトも、よろしければぜひご覧いただければと思います。
これもいわゆる検索型FAQサイトで、「下痢」という言葉を入力すると、関連する質問がたくさん出てくるということで、いろいろな専門家の方や在宅の方のご意見をお伺いしながら、あるいは患者さん・ご家族の悩みに沿って、それに答えられるようなコンテンツも今後増やしていきたいと考えています。

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これは帝京大学医学部附属病院がん相談支援センターでお受けしている主な相談をまとめたものです。東京の大学病院では在宅、介護、転院の相談が多いです。ただ、コミュニケーションのお悩みも非常に多いですし、お金のことも多いです。ゲノム医療も含めた検査のことについて、相談されることもあります。そのため、やはり患者さんの悩みごとからどうサポートに結び付けるかということも、日々考えながら対応していく必要があると考えております。

地域における「がん医療ネットワークナビゲーター」の育成

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これは「地域における相談支援活性化人材の育成の例」ということで、私自身も、この日本癌治療学会の「がん医療ネットワークナビゲーター」の委員になっておりまして、地域で、「がん相談支援センター」の弟分、妹分のようなかたちで、一緒になって患者さんを支える人材ということで、医療資格を持っていらっしゃる方も、そうでない方も多くいらっしゃいます。患者会の方、患者支援にかかわっていらっしゃる方、相談窓口の方、そういった方が、相談支援センターにつないだり、あるいは信頼できる情報をお伝えしたりというようなかたちで、患者さんを応援するといった人材を全国に育成できればということです。全体で、今のところ1,000人を少し超えたぐらいでしょうか。全国で、少し地域差はありますが、こういった方も、ぜひ全国に広げていければよいと考えています。

質の高い患者さんケアを実現することを目指して

冒頭にご紹介させていただいた、「がん患者のための多職種チームケアと地域医療連携を推進するプロジェクト」ということで、質の高い患者さんケアを実現することを目的に、情報を共有しておりますが、こういったことをきっかけに、地域での患者さんのサポートで、「どのような顔の見える連携ができるのか」、あるいは、次のステップで「どのような協業ができるのか」というようなところが、ぜひお伺いできればと考えております。

「第9回日本がんサポーティブケア学会学術集会」開催

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先ほど篠崎先生からもご紹介いただきましたが、2024年5月に、「第9回日本がんサポーティブケア学会学術集会」を埼玉県で開催します。
サポーティブケアは「支持医療」とも申しまして、副作用の管理や患者さんの後遺症へのサポート、アピアランスケア(外見ケア)なども含まれますし、一方で、副作用のリスクがある人に対してきちんと介入前に評価をして予防する、あるいは副作用を軽減するといったことも含まれます。そういった意味では非常に幅広い領域でありますし、副作用をきちんと管理することによって、がんの治療の有効性を高める、安全性を高めるということも十分期待できる領域です。そして、こうした支持医療・サポーティブケアは、医師だけではなくて多職種の医療者の連携によって実現できるものです。

そのため、多職種で学ぶ、チームで支えるということが、大きなキーワードといえるかと思いますので、地域あるいはチームというところを、来年の埼玉の会ではキーワードにしていきたいと思っております。現地埼玉での参加も大丈夫ですし、今回のような、オンラインでもご参加いただける企画を設けたいとも思っております。広島からも、いろいろな発信をお伺いできる、皆さんと共有できることを楽しみにしておりますので、よろしければぜひご参加いただければということで、最後にご案内をさせていただきました。

ということで、少し総論的な話ではありますが、ぜひこれから、皆さま方からいろいろお話をお伺いしながら、広島の患者さん・ご家族を支えるということをご一緒に考えていきたいと思います。以上です。ご清聴ありがとうございました。



篠崎:渡邊先生、講演1として、また基調講演としても大変素晴らしいご講演をありがとうございました。がん医療を俯瞰(ふかん)しての立場から、私たちに、どうあるべきなのか、ただ、あるべき姿というのは、なかなかはっきりとしたものを明確に示すことはできず、それぞれの病院や地域で、それぞれ皆で考えていこうといったところではないかと思います。

私から1点だけお伺いしたいのですが、今回のこのがん医療従事者研修会は、県立広島病院のがん診療推進運営委員会と、「がん患者のための多職種チームケアと地域医療連携を推進するプロジェクト(#まるコラボ)」2つの主催で開催しております。今回のこの研修会も、全国に向けてSNSで発信されているわけですが、実際に、渡邊先生が国立がんセンターがん対策情報センターにいらっしゃった時に、私もよくウェブ上で情報を拝見いたしました。現在帝京大学に移られて、個人としてだけではなくて、病院としても積極的に情報発信というものを、実際にどのようなかたちでやっておられるのか、その辺りのコツのようなところを教えていただければと思います。

渡邊:ありがとうございます。東京都板橋区には、帝京大学医学部附属病院を含め4つの基幹病院があります。コロナで残念ながら3~4年お休みを余儀なくされていたのですが、板橋区医師会の先生方、基幹病院、多くの医療機関、クリニックの先生方と一緒にサバイバーシップについて議論をしようという、「板橋サバイバーシップ研究会」というのがあります。 重要なところは、サバイバーシップというのは、がんでスタートした概念ではあるのですが、心不全や透析をしていらっしゃる患者さん、慢性呼吸器疾患など、非がんの方に対しても同じような考え方が適用できるのではないかということで、勉強会をさせていただいています。

こういった機会でお話をすることで、普段困っていることや、なかなか言えないこと、自分の弱みを場合によってはさらけ出すようなことも含めて、悩みごとや苦労していることを共有することによって、「がんの部分はもう少しうまくやっているよ」というようなことがあります。あるいは非がんの部分で、例えば慢性の呼吸器疾患や神経難病では経過が非常に長いので、そういった方ですと、在宅の方も結構いろいろなノウハウを持ってかかわっていらっしゃるなど、意外と話し合ってみるといろいろお知恵を伺うことが多いので、それをぜひ皆さんと共有していって、お互い少し元気になって、またあした取り組めるというようなところがありますので、ざっくばらんにお話ができる環境が整っているとよいなと思いますし、私の話がそのきっかけになると本当にありがたいと思って、今日は参加しております。

篠崎:ありがとうございます。もう1点お伺いします。がん医療が外来へシフトしていて、地域の連携も、あり方が変わってきているというようなことをお話しいただいたと思います。そういった中で、「院外での専門性」といったことを少しお話しになれましたらお願いします。実際に具体的なところとして、外来化学療法や「免疫チェックポイント阻害薬」なども入ってきているのでなかなか難しくて、すぐに病院に連絡いただくということを、今当院ではスタンスとして置いているのですが、そういった「院外での専門性」というのは、具体的にはどういうことでしょうか。

渡邊:なかなか難しく、その施設でどういう患者さんを診ていらっしゃるか、あるいは患者さんがどこに住んでいらっしゃるか、その地域のクリニックや病院で、どういった状態まではサポートできて、どこからは難しいという、役割分担などの議論をどうしてもしていく必要があるので、そこは本当に、「これが答えです」というのはないです。

事例検討会で話題にすると、「うちはこのようにやっている」、あるいは「うちはここでうまくいっていない」といったことを話し合うことによって、「実際の事例で、あるいは連携の中で工夫していきましょう」ということがあって、なかなか一律な答えが出なくて、しかも、職種の組み合わせも結構変わってきます。地域にない職種について議論していても限界があるので、具体的に「これが正解」という部分がないのは、なかなか歯がゆいですが。

都市部や地域で、いろいろな医療資源や介護、在宅のリソースの中で、工夫してうまくやっていらっしゃるところもあって、そこで思わぬ出会いに遭遇することもあります。そういった新しい発見を得られるきっかけづくりがやはり重要で、そこに地域の拠点病院がかかわっていると、点ではなく面として、地域の患者さんのサポートにつながっていくのではないかというヒントにはなると思っております。

篠崎:ありがとうございます。

続きまして、2つ目の演題に移りたいと思います。「広島県の取り組み」として、広島県健康づくり推進課の主査の西岡さんにご講演いただくことになっております。それでは西岡さん、よろしくお願いいたします。

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掲載日:2023年10月02日
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