がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクトfacebook

がん医療フォーラム 岩手 2016/気仙がんを学ぶ市民講座
【フォーラム】調剤薬局ができること ―地域の患者さんが安心して健康に生活できることを目指して―

白井 秀徳さん(そうごう薬局高田店 薬局長/薬剤師)
白井 秀徳さんの写真
白井 秀徳さん
動画はこちら 動画

在宅療養を支える一員としての調剤薬局

私が勤務しているそうごう薬局高田店は、岩手県立高田病院の前にあります。仮設の店舗ですが、高田病院の患者さんがけっこう来てくださいます。そうごう薬局は皆さまのお役に立てる「みんなの健康ステーション」となれるように日々スタッフ一同頑張っています。

病院で治療を受けて、場合によっては病院で最期を迎えるという、今までの日本の医療のパターンが徐々に変化してきています。住み慣れた家で暮らしながら治療を受けたり、介護を受けたりして、最期を迎えるというパターンが出てきました。例えば自宅で過ごしている方が、病気になって医療が必要になったら病院へ行く、介護が必要になったら介護職の方に手伝っていただいく。生活支援を市役所の人たちに相談しながら、家にいながらいろいろな職種の方が関わって、安心・安全に生活できるような形がつくられて、この中に薬局も入ってきています。

こうしたさまざまな職種の方たちが関わる在宅療養支援の輪は、「地域包括ケアシステム」と呼ばれます。このシステムを回すためには、さまざまな医療・介護の職種が連携することが重要であるとされています。気仙でも地域連携が非常に重要だということで、いろいな職種の方が関わって勉強会などを開いています。さまざまな医療・介護の職種の人たちが「顔の見える関係づくり」を構築するための連携活動があり、薬剤師会や薬局も関わっています。例えば「陸前高田の在宅療養を支える会(チームけせんの和)」や「大船渡在宅ワーキンググループ」など、さまざまな職種が関わった会合が盛んに行われています。

お薬手帳による薬のチェック

調剤薬局ができることについて、お話しします。調剤薬局は、お薬手帳による薬の管理をします。調剤薬局に行くと、「薬剤師がお薬手帳を見せてください」といって、その日に処方された薬のシールを貼ってくれると思います。これはただシールを貼っているだけでなく、どういうお薬を飲んでいるか、その飲み合わせは問題ないのか、ほかの病院にかかったときに、そのお薬は大丈夫かというのを一つ一つチェックしています。それだけでなく、ほかの病院や薬局でもらったお薬、ドラッグストアで買ったお薬、例えば風邪になって一時的にドラッグストアで買ったお薬とかも書いていただくと、それらと処方薬に相互作用がないか、きちんと調べております。

薬だけでなく、お年を召した方がグルコサミンなどいろいろなサプリメントを飲んでいらっしゃいますが、そうしたものもお薬手帳に書いてくださいとお勧めしています。例えばグルコサミンであれば、カニやエビのアレルギーがある方が飲むとアレルギーが起こる場合があります。そうしたことも薬剤師がチェックできます。

講演の様子の写真
講演の様子

薬をきちんと飲んでいたたくための工夫

お薬がきちんと飲めるような工夫を行っています。例えば、50代の女性が「飲んだか、飲んでいないかを忘れちゃうの。2個飲むのを1個飲んだりして、数もずれちゃっているの」と、持っているお薬を全部持って薬局にみえました。錠剤や粉薬が混ざっていたものを、薬剤師が前に飲んでいたお薬と、今必要なお薬に分けました。そして、その時点で飲むべき薬を朝・昼・夜とそれぞれ飲む回ごとにまとめて1包化してお渡ししました。ばらばらだった薬を、一回に服用する分ごとにまとめることで飲み忘れたり、飲み間違えたりすることがなくなりました。

余ったお薬の整理と管理ということで、残薬バックという、余ったお薬やわからないお薬を入れていただく袋をお渡しすると、過去に飲んでいたお薬などを入れて、持ってきてくださいます。それをしっかり判別して、使用期限を過ぎているものは廃棄します。それ以外の余ったお薬は、処方されたお医者さんに報告します。

余ったお薬を利用することで、以前70日分処方されたけれども、今回は35日分を処方するので大丈夫ですね、というようなことをお医者さんに報告してお渡しすることもできます。医療費の負担のある方はお支払いの金額も下がりますし、お支払いのない方でも医療費が削減できます。このように、お薬の有効利用もできます。

在宅訪問による薬と健康の管理の実際

在宅療養の患者さんの場合は、薬剤師がお宅に伺って健康状態の把握、お薬をきちんと飲めているかどうかを調べています。その一つの方法として、お薬カレンダーで薬の管理をしています。家に置くカレンダーは縦軸に曜日、横軸に朝・昼・夕・寝る前と書いてあり、そこに飲むべきお薬をまとめて1包化したものを貼り付けて、飲み忘れた場合には一目でわかるようになっています。例えば「火曜日の昼のお薬が残っていますけれど、どうしたのですか」といったお話をさせていただいて、きちんと飲めるように管理しています。

お薬の服用状態を確認するだけでなく、健康状態の把握、生活状況がどうなっているのかなどもきちんとお話させていただいています。患者さんのお宅に伺ったときには、時間をかけてしっかり話を聞くようにしています。多くの患者さんに「今日はじっくり話を聞いていただいて、本当に安心しました」という言葉をいただいていることが、私たちの活動の原動力にもなっています。

地域の相談窓口としてのかかりつけ薬局

健康相談を定期的に開いたり、セルフメディケーションと言いますが、病院に行くまでもないけれど、ちょっと気になっている健康上の相談も薬局では受け付けたりしています。必要に応じてOTC(処方箋なしで買えるお薬)などをお勧めしたり、症状によっては病院に行ったほうがいいですよということもお伝えしたりしています。

また介護用品などの注文・相談も承っております。介護用品に限らず、在宅療養にどのようなものが必要なのかといった相談にも対応させていただいています。

最近、「かかりつけ薬局」ということが言われています。今までは、例えば医療機関A、医療機関Bにかかった場合に、それぞれの医療機関の近くにある別々の薬局で処方薬を購入するようになっていました。それを、かかりつけ薬局という形で一カ所に決めて、薬の管理、健康の管理もその薬局で行うようにしたほうがよいと言われています。かかりつけ薬局を選ぶと、在宅療養になった場合にかかりつけ薬局の薬剤師がお宅に伺い、療養に必要な薬関係、健康関係はすべてその薬剤師に相談すればつながるということです。ですので、かかりつけ薬局のかかりつけ薬剤師を選ぶことをお勧めしています。

かかりつけ薬剤師は個別の電話番号をお教えしていますので、いつでもつながる状態になっています。時間外でも何か不安なことがあったり、薬のことで相談があったりした場合に、いつでも相談できるよきパートナーを見つけるということで、かかりつけ薬剤師をぜひ持ちましょうとお勧めしています。

薬局は困ったときにいつでも、何でも聞ける街の相談窓口だと思っています。そして、薬局は多様な職種の方に話をつなげることができる窓口です。先ほどお話しましたように、気仙では多職種が連携して顔の見える関係をつくっています。お医者さん、歯医者さんはじめ医療スタッフ、ケアマネジャーさんなどの介護スタッフ、さまざまな職種の方たちと連携ができています。どこに相談したらいいのかわからないことも、薬局に聞いてもわからないだろうと思わず、ぜひ相談窓口として薬局を使っていただきたいと思っています。

前へ
次へ
掲載日:2017年1月30日
アンケートにご協力ください
「がんの在宅療養」ウェブサイトについて、あなたのご意見・ご感想をお寄せください。
アンケートページへアンケートページへ