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HOME > 在宅療養ガイド > 第1章 在宅での療養を始める > 1-1.本人と家族の心構えと準備

―第1章―
在宅での療養を始める

自宅や施設など、「在宅」の環境で療養生活を送るときの心構えや必要な準備、医療や介護・福祉のスタッフとの対話のヒントについてまとめています。初めからすべてを準備しておく必要はなく、少しずつ慣らしながら、徐々に安心して過ごせる環境をイラスト整えていくとよいでしょう。まず始めてみて、そのあと相談したり、話し合ったりすることでよい工夫やヒントを得られることがあります。

この章のまとめ
  • 本人と家族の希望や願いを共有することが大切です。そのために、小さなことでも率直に話し合える関係をつくっていきましょう。
  • これからの当面の目標を定めたり、心配なことを具体的にしたりして、できるところから周囲のスタッフの助言や支援を受けながら準備を進めていきましょう。

1-1.本人と家族の心構えと準備

1-1-1.家族の心の準備は、相談できる話し相手を見つけることから

在宅での療養にはマニュアルもなければ、決まった型もありません。患者さん本人と家族ごと、それぞれに療養のかたちがあります。はじめは、定められた型がないからこそ、不安も湧き上がってくることがあると思います。

あまり形式にとらわれず、患者さんと家族でつくり上げていくという気持ちで進めていきましょう。まず始めてみて、そのあと相談したり、話し合ったりすることで解決や納得に結びつくこともあります。

Sさん(55歳)は都内に住む専業主婦です。ご主人(59歳)は大手企業に長年勤めていましたが、定年を控えた58歳のときに膵臓がんを患い、闘病生活に入りました。“オシドリ夫婦”とはいえない関係でしたが、定年後ののんびりとした生活を二人で思い描いていた矢先のことです。また、がんと診断されたときには、根治が難しい状態でしたので、担当医から病名と今後の見通しが厳しいことの説明を受けたあとは、まさに夫婦で頭が真っ白になりました。会社での引き継ぎもそこそこに入院生活が始まり、抗がん剤治療に加え、緩和ケアとして痛み止めの医療用麻薬の服用が始まりました。外来での治療が何度か繰り返されましたが、がんの広がりの程度から考えると、今後はご主人の痛みや生活上のつらさを取り除くケアを重点的に行うこと、住み慣れた環境でイラスト暮らせるように在宅での療養に向けた準備を進めていくのがよいでしょうと担当医から説明を受けました。治療に伴う副作用も落ち着いて、これからの見通しについて考えられるようになってきたこともあり、ご主人との話し合いの結果、今後は在宅で痛みのコントロールを受けながら療養していくことを選択しました。長女が同居しており3人暮らし。長男は結婚して独立しています。

「Sさん」と在宅の準備について相談できる、相談員の「Nさん」とのやりとりをみながら、一緒に考えてみましょう。


家族Sさんこれまでは入院していることが多かったので、通院しながらの家での生活は短期間でした。病気が治らないことを受け入れることはつらいのですが、限られた時間を家でゆったり過ごすことができるのであれば、本人の思いをかなえてあイラストげたいと思います。ただ、最期を間近にしている人に接するのはもちろん、今まで入院していた家族を家でケアするのも初めてです。生活の準備も必要だし、手続きのこともある、そして気持ちの整理もついていないですし、どこから始めたらよいのか、混乱しています。

相談員Nさんこの半年ほどで、目まぐるしい変化があって、本当につらい、大変な時期を過ごされてきたのですね。これからの在宅での生活では、ご主人とS さんがゆったりと心を落ち着けて過ごせるように、お手伝いします。

必要なものをそろえたり部屋を整えたり、介護保険などの制度的な手続きをしたりといろいろ行うことがありますが、その前に大切なことがあります。それは、あなた一人で身の回りの全てのことを必ずしも背負おうとは思わなくてもよいということです。ほかのご家族やご主人を支えてくれる人たち(支援者)、時によってはご主人とともに、一緒に支え合っていくというくらいの気持ちで大丈夫です。

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家族Sさん同居している娘はできるだけ協力すると言ってくれています。結婚して独立した息子は忙しそうですが、話し相手にはなってくれそうです。

相談員Nさん最も身近な息子さんと娘さんが支援者になってくれるのなら、かなり心強いですね。まず、誰が家族の窓口になるかを確認しておきましょう。

家族Sさん家族の窓口?


相談員Nさん「キーパーソン」といったところでしょうか。ご本人の希望に沿えるように、ご家族や関係者の意見を取りまとめて、医療者と主にやりとりする方です。最初は、ご本人自身が療養に関する一切を自分で決めたいとおっしゃるかもしれません。ただ、身体が衰弱してくると、それも難しくなってきます。そのときは、近くにいる方が治療やケアの方針や内容について判断したり、在宅療養に関わる医師や看護師、ケアマネジャーなどに伝えたりしなければなりません。「きっとイラスト、普段のこの人ならこう思っているんじゃないかな」と、考えていくというイメージでしょうか。奥さんでは荷が重すぎるというのであれば、息子さんでも娘さんでもよいと思います。ご家族の窓口(キーパーソン)を決めて、療養生活が円滑に過ごせるようにしていきましょう。

家族Sさんずっとそばにいる私が適任なのでしょうね…。息子や娘と話し合ってみます。ただ、家族内は何とかなっても、遠方に住んでいる夫の妹が在宅での療養に反対しています。まだ治る見込みのあるほかの治療法があるのではないかと…。夫の状態がさらに悪くなったときに何か言われたり、亡くなった後に責められたりしないか心配です。

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相談員Nさんおっしゃるとおり、ご本人やご家族が在宅での療養を希望しても、緩和ケアや看取りをめぐって、親族間でのトラブルが起こりうる可能性があります。一般的に、ご本人と離れて暮らしている親族の方が在宅療養に不安や不満を感じる理由として、在宅療養がどのようなものなのかをイメージできないことがあるようです。在宅療養を望んでいるご本人のお気持ちや、在宅に関わる医療や介護のスタッフがどのような体制でサポートするのか、ご家族がどのような役割分担でご主人を支えるのか、あらかじめきちんと確認しておくのがよいと思います。それでも理解が得られないのであれば、医師から直接話してもらうのもよいでしょう。在宅療養が始まった後も、親戚の方には折に触れて経過を報告し、やりとりの不一致や摩擦が生じないように心がけるとよいと思います。

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冒頭で在宅での療養にマニュアルはないとお伝えしましたが、一つだけ心にとどめておいていただきたいことは、Nさんが言っていたように、身近にいて介助する家族の方が全て一人で抱えこむ必要はないということです。大切な方とのお別れがそう遠くない状況の家族は、ケアや介護も加わって、身体的にも精神的にも激しく消耗します。一方、「在宅での療養に協力してくれるだろう」とあてにしていた身内が、在宅療養に否定的だったり、非協力的であったりすることもしばしばあります。そんなときは近所で親しい方や、在宅療養に理解を示してくれる知人・友人でも構いません。ちょっとした手助けをしてくれたり、精神的にあなたの支えになってくれたりしてくれる方を一人でも多く見つけておきましょう。実際に在宅での生活が始まると、話し相手やお手伝いをしてくれる人が増えてくることもあります。在宅での暮らしを話せる人が周りにいることで、家族にとっての心の支えになります。

☆POINT
  • なんでも一人で抱え込む必要はない。
  • 家族内で窓口(キーパーソン:本人の希望になるべく沿えるように、家族や関係者の意見をとりまとめて、医療者と主にやりとりする人のこと)を決める。
  • 親族間で情報や方針を共有し、在宅での緩和ケアや看取りについてすれ違いがないようにする。
  • 支援者となってくれる友人・知人を見つけておく。
ご家族の体験談

支援は一歩ずつ段階を踏んで

広島県 50歳代 女性

夫は58歳でしたが、末期がんとの診断で介護保険の対象でした。担当のケアマネジャーさんが看護師さんということもあり、今後在宅で過ごすためのさまざまなアドバイスをいただきました。子どもたちは県外にいて頼れない状態でしたので、外部の方々のお力をお借りするしかありませんでした。お風呂や手すりなどの住宅改造でケアマネジャーさんをはじめ、いろいろな方々が少しずつ家に来られるようになり、在宅医、ヘルパーさん、訪問看護師さん、在宅リハビリテーションの理学療法士さんの方々を、夫は自然に受け入れられるようになりました。また、夫に「備忘録」として日記のように書いてもらっていたので、自然にノートを介して話をすることで気持ちを知ることもできました。「エンディングノート」というと構えてしまいますが、一冊のノートを交イラスト換日記のように書くほうがかしこまった話も違和感なくできたように思います。

※エンディングノート
人生の終末期にあたり、ご本人の想いや希望をご家族などに伝えるために書きとめておくノート


今とこれからを話し合う

鹿児島県 40歳代 男性

父ががんとなり自宅での療養が始まるにあたり、今まで話したことがなかったことを話すようにしました。そのなかで、これからの療養にあたり、費用を考えなくてはなりませんでしたが、家計管理は父がしていたこともあり、このとき初めて家計の実情について知りました。

民間の医療保険にも入っておらず、また預貯金もほとんどなく自宅療養を始める以前に、治療の費用の捻出もままならない状況でした。年金は十分にあったのですが、その年金が父の兄弟への貸し付けにまわっていました。

治療や自宅療養に必要なお金を確保するために社会保険の利用を検討し、治療方法の再考などにもお金が最大の問題でした。今は兄弟からの返済を含め、なんとか治療と自宅療養ができています。家族が全てを話し合うところから心構えや準備が始まると実感しました。

家族は主役ではなく、本人の想いに寄り添うことが大切

40歳代 女性

父が、命の期限を告げられたとき、病弱な母に代わり娘である自分が全てを取り仕切らなくてはならないと思っていました。今後の治療方針、療養場所、生活など、何から手を付けたらよいのか…。まず、本やネットで情報を集め、親戚や友人に相談しながらも頭の中が混乱していました。そんなとき、知り合いの人から「決めるのはお父さんだろ。それはお父さん自身の問題だから、あなただけで決めるべきではないのですよ」と言われたのです。一瞬理解できませんでしたが、はっと気づきました。自分がキーパーソンとして全てを背負うのだという過度な気負いから、私は自分の立ち位置を勘違いしていたのです。中心は父本人であること、選択や決断を迫られたときには、「父の意思と願いにいかに沿えるか」を判断の基準にするということ。そんな一番大切なことを見失っていました。父の人生、父と母の夫婦の物語の主人公はあくまで父、あるいは両親なのだから、脇を固める私たち家族は自分の思いや他人の意見に振り回されず、ただ裏方として主役を支えながら物語の最終章を見届ければよいと思ったとき、覚悟ができました。


1-1-2.療養を考えるときの、患者さん本人とのコミュニケーション

療養の方針を決めるためには、当然のことですが、患者さん本人の気持ちを知ることが何よりも大切です。残された人生をどのように生きたいのか、家族とどう過ごしたいと考えているのか、どのような療養を望んでいるのか。本人の想いや希望を把握することは、在宅での療養の基本的な方針や方法を決定していくうえで、なくてはならないものです。家族として、まだ落ち着いた気持ちになれないかもしれませんが、本人との対話を重ねながら、残りの人生や療養をよりよいものにしていきましょう。

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家族Sさん「できるだけ家で過ごしたい」という、夫の意向を大切にして最期まで支えていきたいと思っています。ただ、私自身の気持ちの整理もなかなかつかないですし、夫もまだ精神的に不安定な状態ですので、これからのことについてなかなか率直に話し合えなくて…。

相談員Nさんそうですね。人によっては、限られた時間を有意義に過ごそうと、気持ちを切り替えてあれこれ計画を練ったり、緩和ケアに関する情報を集めたりする方もいらっしゃいます。一方で、自分の考えがまとまらなかったり、考えを持っていても言葉としてうまく伝えられなかったりする方も多いと思います。

家族Sさんイラスト主人の考えていることをうまく聞いてあげるにはどうしたらいいのでしょうか。

相談員Nさん住み慣れた家で過ごしたい、いつもの生活を送りながら安らかに過ごしたい、といった思いで、在宅を療養の場として選んでいらっしゃるかもしれません。ご自宅での療養生活で一番大切にしたいことを、漠然とでもおもちになられていることでしょう。以前の思い出話や苦労話をしながら、こうしたことを少しずつ引き出してあげられるとよいと思います。また、一方で在宅での生活について、ご本人なりの不安や心配があることでしょう。そのためのコミュニケーションの取り方ですが、以下のいくつかの項目が参考になるかもしれません。

効果的なコミュニケーションを行うために
  • 会話を始めるときは、話の切り出し方を工夫してみましょう。例えば、患者さん本人が自分から話したいと思われる話題を、先に質問してみるというのもよいかもしれません。
  • 本人の話していることが、たとえあなたの考えと違っていても、まずはしっかり耳を傾けましょう。
  • 聞いたふり、わかったふりはしないで、わからないことはしっかりと聞き返しましょう。
  • 本人の話を受けとめたうえで、あなたの認識や気持ちも伝えてみましょう。ただ、大切なことはあなたの考えを本人に知ってもらうことです。同意を強要しすぎないようにしましょう。
  • 本人が何を一番伝えたいかを知るために、話している内容だけでなく、声の調子、身振り、言葉そのものについても注意を払いましょう。
  • 本人が話しているときには、言葉のひとつひとつに反応するのではなく、なるべく冷静に聞くようにしましょう。イラスト
  • 本人が話したことを復唱し、あなたが理解していることを示しましょう。本人も安心すると思います。

相談員Nさんご本人の話に注意深く耳を傾け、また様子をよく観察することによって、言葉の端々やちょっとしたしぐさから、ご本人が本当に伝えたいことを見つけ出せるとよいと思います。そのとき、あなたが会話をリードするのではなく、相手の話題をありのままに受けとめる姿勢が大切です。

家族Sさん例えば、「いつ頃まで動けるのか」など先のことを質問されたら、どう返事をしたらよいのでしょうか。

相談員Nさん「今の時点では、将来何が起こるか、まだわからない」と答えてよいと思います。正直に誠実に向き合う、これは普段の生活でも同じことですよね。こうしたときには、「今度、一緒に聞いてみましょう」と提案してみてもよいと思います。ご本人の不安な気持ちに寄り添いながら、ともに疑問に答えていくようにやりとりできるとよいでしょう。

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◆◆◆

本人の率直な気持ちや希望を把握するのには時間がかかることもありますが、ここをなおざりにするとその後の生活や療養の方針が見極めにくくなります。本人の不安や疑問、つらい気持ちに耳を傾けながら、聞き方や話題を工夫し、具体的な意向を聞いていきましょう。同時に、あなたの気持ちや考えも伝えて、共有していくのがよいと思います。でも、一方的な意見の押し付けは、ときに相手を傷つけてしまうことがありますので、気をつけましょう。

☆POINT
  • 療養生活や治療・ケアの方針などについて、本人の意向を確認する。
  • 「一番大切にしたいこと」を本人と家族が共有する。
  • 本人の不安や疑問を受けとめ、つらい感情も共有する。
  • 家族の考えを伝えることは重要だが、押しつけにならないように気をつける。

1-1-3.在宅での療養環境を整えるには

在宅での療養を始めるにあたっては、介護保険などを上手に活用して必要なものを整えていきましょう。介護保険は65歳以上で介護認定を受けた人が利用できます。一方、65歳未満の方でも40歳以上であれば、医師が末期がんと診断し、医学的に回復の見込みがない状態に至ったと判断した場合には利用できるようになります。はじめから全てをそろえる必要はありません。ご自宅で療養してみて、体調に合わせて必要なものを変更、追加していけばよいと思います。

家族Sさん主人は自宅で療養したいと言い、私もそうさせてあげたいと思いますが、自宅でも安心して過ごすことができるのでしょうか。

相談員Nさんご家族とともに人生という時を刻んできたご自宅はご本人にとっての城であり、安心できる場所です。設備や広さ、スタッフの充実、変化があったときの対応という面では病院のほうが勝っているかもしれませんが、在宅でも必要な検査や医療処置は可能ですし、何よりご本人の安心感が違います。ご家族も、家事をしながら介護ができたり、介護に疲れたらすぐに横になって休んだりすることも可能です。

家族Sさんただ、廊下や階段には手すりがありませんし、狭いトイレや浴室、ところどころにある段差などもそのままでは苦労するかもしれません。

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相談員Nさん介護保険では、最新の使いやすい介護用電動ベッドなど福祉用具のレンタルや購入ができます。また、浴室やトイレなどの住宅改修では、一部費用の給付を受けることができます。ベッド回りやトイレなどにレンタルの手すりを設置するだけでも、ご本人の生活の質(QOL= クオリティ・オブ・ライフ)を大きく上げたり、ご家族の介護の負担を減らしたりすることができます。ご主人と相談してどの部屋を主な療養場所にするかを決めたら、生活の動線に沿って安心、安全な療養環境を整えていきましょう。

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家族Sさん介護用電動ベッドも借りられるのですか。


相談員Nさん多くはレンタルできます。楽な姿勢をとれるように上体を起こす背上げ機能、膝を立てたりする機能などに加え、介護者の負担軽減を考えてベッドの高さを変える機能もありますので、レンタルするととても便利です。ベッドの幅や長さ、木調タイプなどお好みにより選ぶことができます。詳しくは、ケアマネジャーや介護機器事業者にご相談ください。

家族Sさん福祉用具には、ほかにどのようなものがあるのでしょうか。


相談員Nさん体の向きを整えるときに使用するクッション、床ずれ予防用具(エアマットレス、ウレタンマットレスなど)、歩行器、車いすなどを借りたり、購入したりすることができます。ポータブルトイレなどのトイレ用品、入浴用椅子、浴槽用手すりなどの入浴用品は、衛生面の配慮からレンタルできず、一部の負担で購入することになっています。種類も豊富ですので、ケアマネジャーや介護機器事業者にご相談ください。

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自宅を安心して療養できる状態に整えるには少し時間がかかります。家のなかでどの部屋を主な療養場所にするかを決め、手すりをつける場所や必要なものをイメージしていきましょう。介護用電動ベッドなど福祉用具は実際に使ってみてから、より使いやすいものに変更することができます。はじめからすべてをそろえる必要はありませんので、試したり相談したりしながら、少しずつ整えていくようにしましょう。わからないことは、ケアマネジャーや訪問看護師などとこまめに連絡をとり、患者さんの状態に応じて生活環境を調整しましょう。

☆POINT
  • 本人の療養場所となる部屋をまず決める。
  • 状況に応じて住宅改修の必要性や福祉用具の購入・レンタルを検討する。
  • ケアマネジャーや訪問看護師などと密に連絡をとり、本人の希望、体の状態に合わせて必要な介護用具を調整する。

1-1-4.在宅での生活に向けた手続きや相談を進めていきましょう

療養環境を整える以外にも、療養をサポートしてもらうネットワークづくりや介護保険の申請、家庭内での介護体制など、あらかじめ準備しておきたいことがいくつかあります。いざ必要になったときに慌てなくてもよいように、入院や通院していた病院、地域の行政窓口などの相談窓口に相談しながら準備を進めていくことが大切です。

家族Sさん在宅で療養するようになると、今までかかっていた病院との関係はどうなるのでしょうか。

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相談員Nさん地域や、在宅医との関係、病院の方針などにより、いろいろな場合が考えられます。病院と在宅医とが連携し、症状の緩和や医療処置を目的に一時的に再入院する場合もあります。病院の方針、在宅医の考えを確認し、ご本人、ご家族の希望なども伝えておくとよいと思います。在宅における終末期患者さんの療養においては、在宅医(在宅療養支援診療所など)や訪問看護ステーション、調剤(保険)薬局、ケアマネジャーなどからなる在宅支援チームとの関係が中心になりますが、病院から在宅へ移行する際や、病院に再入院する場合には、在宅支援チームと病院との連携が図られます。患者さんの情報が引き継がれ共有されます。

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家族Sさん病院のどの部署に相談すればよいのですか。


相談員Nさんがん診療連携拠点病院にはがん相談支援センターがあり、がん診療連携拠点病院以外の病院でも多くのところが患者さんやご家族のための相談室や地域連携室を置いています。在宅医の紹介など在宅療養に関する相談もここでできますので、活用しましょう。

家族Sさん介護保険の申請は早めにしたほうがよいのでしょうか。


相談員Nさん介護保険は申請からサービスを利用できるようになるまで時間を要する場合があります。入院中でも申請手続きを行うことができますので、ご自宅で療養することをお考えであれば、早めに申請しましょう。介護保険の申請窓口は、市区町村の介護保険担当課と近隣の地域包括支援センターです。地域包括支援センターには保健師、ケアマネジャー、社会福祉士が常駐していて、介護保険や在宅介護全般の相談に乗ってくれます。

家族Sさん介護を手伝ってくれるという娘は、普段は勤めに出ており、帰宅も結構遅いです。介護との両立で身体を壊さないか心配です。

相談員Nさんご家族で大切なお父様を介護することは、すばらしいことであると思いますし、ご本人も安心だと思います。確かに、お仕事をして遅く帰宅され、その後、介護となると大変ですね。とはいっても、お嬢さんの仕事や生活のリズムも考えて、無理なく続けられるための準備も大切です。有給休暇や通院の付き添いや介護保険の手続き代行などで年5日取得できる介護休暇をうまく利用したり、短時間勤務などの制度を利用したりして、介護の時間を確保できることもありますので、就業規則などを確認して職場の上司や担当の窓口に相談するとよいと思います。がん診療連携拠点病院に設置されているがん相談支援センターではご本人だけではなく、ご家族の就労に関する相談も受け付けていますので、職場への相談の進め方、事前の準備や参考になる情報を得ることができるでしょう。

家族Sさん結婚して独立している長男も父とゆっくりできる時間をもちたい、世話をしたいと言ってくれています。

相談員Nさん息子さんも日頃お父様と離れて暮らしているので、一緒にいて話をしたい、世話をしたい、お母様を支えたいと思うお気持ちはよく理解できますし、ご本人も喜ばれると思います。お母様も安心でき、心休まると思います。介護を必要とする家族の介護や世話をする方のために、一定期間休暇を取ることのできる介護休業制度があります。末期のがん患者さんもその対象となっていますので、利用されて家族とのひとときをもたれるのもよいことと思います。

また、家族全員が、それまでの生活を維持しながら無理なく安心して介護することも重要です。訪問看護師やヘルパーに必要な介護を任せたり役割分担したりして、ご家族にしかできないこと、例えば手を握って声をかける、ただ傍(そば)にいて一緒に時間を過ごすといった時間をもつことも、コミュニケーションという大切な介護の一つです。職場へも近況や今後の見通しなどを定期的に報告するとよいでしょう。

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☆POINT
  • 在宅療養に関して困ったときや情報がほしいときは、病院の相談窓口や地域包括支援センターを活用する。
  • 介護保険の申請からサービス利用までには時間がかかる場合があるため、申請手続きは早めに行う。
  • 早い段階から、仕事の調整や、職場への介護休業や短時間勤務制度の利用申し込みなど家族の介護体制を整える。がん相談支援センターでは、本人だけでなく、家族の就労に関する相談もできる。
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掲載日:2015年12月21日
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