がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト
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患者自身、そして家族も自分の人生を大事に ~在宅療養チームとの関わりを通して学んだこと~

がん情報への接し方について

国立がん研究センターがん対策情報センターの患者・市民パネルに参加していたことをきっかけに、「ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド」にも協力させていただきました。それ以前に「もしも、がんが再発したら [患者必携]本人と家族に伝えたいこと」という冊子にも関わらせていただきました。これは患者や家族の、再発した時に役立つ情報が欲しいとの希望でできたものです。目次のたて方や挿し絵にも、患者・家族の意見を反映していただきました。

その冊子ができた時に、がん相談支援センターの相談員の方から「この冊子を置くと、患者さんが嫌がるのではないか」と言われました。再発について、患者が不安を抱くと思われたのでしょう。

在宅療養ガイドも含めて、がんの情報のなかには、今すぐ読むのはつらい内容があるかもしれませんが、読みたくみたくないページは無理して読まなくてよいと思います。目次だけみて、その時に自分がほしい情報を得るために活用すればよいと思います。わからないままでいるより、わかって安心することもあります。不安を解消する道具として、在宅療養ガイドや、がん対策情報センターの情報・冊子などの信頼できる情報源を役立てていただければよいのではないかと思います。

患者会で励まされ、患者や家族をサポートする側に

私は大腸がんを告知された時、さまざまな不安や悩みに押しつぶされそうになりました。仕事を辞めなければならないのか、家族は私の病気をどう受け止めるのか、死を覚悟して身辺整理をしなければならないのか、などなど。

私はがんにかかる少し前に、友人に誘われて「広島にホスピスを求める会」に参加しました。そこで知り合った、がん体験者や医療者の方たちのアドバイスを得られたおかげで、最適な治療を選択できました。特にがんの先輩体験者たちの励ましで、辛い治療を受ける覚悟もできましたし、がんになっても生きていけるという強力な心の支えになりました。

私が手術の後に自宅での生活に戻りましたが、まもなく、今度は夫が会社の健康診断をきっかけに食道がんと診断され、その後多重がんでがんの末期のため定年前に会社を退職し、うつ病にも苦しみました。

こうしたことから、私はがん患者会の活動を始めました。がん患者の心の葛藤、不安は、同じ経験をした患者同士の交流によって癒され、慰められるという体験があったからです。また、患者会はがんという病気について語り合える場、家から出ていける場、家とは違う時間を持てる場です。私にとっても安心安全な場である患者会があったから、多重がんの夫のうつ病にもなんとか対応して、看取ることができたと感じています。

患者やご家族の多くは、それぞれ悩みや不安があり、情報や仲間を求めて患者会に来られます。例えば、定期的に受ける診察日が近づくにつれ、直前の3日くらいは不安で眠れないと悩んでいる方がいました。ある方が「私も眠れなくなるけど、思い切って睡眠導入剤をのんだら、次の日、すかっとしていたの。そういうときは思い切って睡眠導入剤をのんでみて」と話されました。これを聞いて、悩んでいた方は「一度、試してみます」と嬉しそうに応えられました。患者会では、いろいろな患者さんやご家族の経験談を聞くこともできます。当事者の声は、何よりも身近で説得力があると思います。

多重がんの夫を見送った後に、私は「NPO法人広島がんサポート」という会を、数名の仲間と立ち上げました。患者さんとご家族に患者目線での情報を提供する目的で、「フレンドコール」という電話相談や面談をする活動に関わりました。この活動でさまざまな患者さん、ご家族の声に接してきました。その経験も含めて、在宅療養の参考にしていただけるのではないかと思うことを、これからお話しします。

在宅療養を支える方たちに

がん患者の場合だけでなく、自宅での看護・介護を中心となって担う人たちは、たいへんさ、困難さを抱えて内にこもってしまうことが、よくあります。

私の夫のように、患者がうつ病になるケースもありますが、家族がうつ病になることも少なくありません。相談を受けた方の中には、患者さんが配偶者のうつ状態を心配されているような内容もありました。家族が「第2の患者」といわれるゆえんだと思います。

患者さんを在宅でケアしている方には、「決して一人で抱え込まないでください」と申し上げたいです。友人とお茶を飲む時間を持つなど、看病・介護の場から少しでも離れる時間を持っていただければ解消できることもあると思います。その時間を持つのも難しいようでしたら、さまざまな形の電話相談などがありますから、そうした相談窓口に苦しい胸の内を吐き出してください。

在宅療養に関わっている専門家、親族や友人の方たちは、看護・介護の当事者が、もしかしたらうつ状態の入り口にいるのではないかと、気づいてあげてください。当事者を一人にしない気配りもしていただければと思います。

毎日の生活で患者さんを支えている人は、精一杯やっていらっしゃいます。私は夫が亡くなった後で、初めて「熟睡とはこういうことだったのか」と思いました。夫の介護をしている間は、夫の動く気配に反応して、ほんとうに眠ることができていなかったのだと気がつきました。患者に寄り添っている人は、みなさん、そういう毎日を過ごしていると思います。

そういう頑張っている人たちに、「あなたの考えていること、やっていることは、そのままでいいよ、大丈夫だよ」と伝えてあげるのも大事なことだと思います。看護・介護者の背中を押してあげる、ちょっとした言葉、手助けが、どれほど力になることかと思います。

在宅療養のチームとの関わり方

在宅療養では、ケアマネジャー、在宅医をはじめ、さまざまな専門家が構成するチームが関わってきます。その人たちとのコミュニケーションを円滑にすることが、患者にとっても家族にとっても大切です。

専門家の側の論理もあるでしょうけれど、患者と家族の側から見たら、ちょっと違うと思うこともあります。そうした時に、真っ向から異論を出せば、相手も構えて反論してきます。きつい調子で責めれば、相手は傷つくし、ガードを固めてしまいます。そうなると、今ある問題を解決するために有益な話し合いをするのは難しくなります。

夫の在宅療養を通して、どんな場面でもユーモア、笑顔を忘れないことが大事だと学びました。夫との会話も、私が思っていることをむき出しにして投げかけた場合は、本音は聞けませんでした。

外部の人に対しても、緊張したり、構えた状態で自分の思いのたけを言い立てても、うまく思いが伝わりません。深呼吸をする、ストレッチをするなど、意識的にリラックスしてみるとよいかもしれません。いきなり核心に突っ込むのではなく、周辺のことから話すとか、「私」ではなく親戚が言っているというような形のほうが、コミュニケーションがうまく進みました。

在宅療養に関わるチームの人たちと、雑談も交えながらユーモアをもって接しているうちに、お互いに打ち解けて、本音での対話ができるようになります。そうしたちょっとした工夫が、患者にとっても、家族にとっても、在宅療養を心地よいものにしていくのではないかと思います。

患者家族は自分の人生を大事に

人はそれぞれの個性、人生があり、社会との関わり方も、家族関係も違います。がんの部位やタイプによって、治療も予後も異なります。最期の迎え方も、人それぞれです。何もかも、教科書通りにはいきません。何が正しい、こうあらねばならない、ということではありません。

夫を看取り、患者会に関わってきた経験から思うのは、患者家族は、患者の命が尽きた後の、自分の人生も考えることが大事だということです。

今でも、死に直面している患者の家族は、何もかも投げうって寄り添わなくてはならないと考える人たちもいます。ホスピスでも、患者家族がそれまでと同じように仕事をしていると、「なぜ仕事を辞めて付き添わないのか」と言われることもあると聞きます。

でも、家族は患者が亡くなった後も生きなければならないのです。家族の一人、一人に、患者を見送った後の人生があります。

介護をしている間も、家族は精神的・肉体的に限界を感じてしまうことがあるでしょう。がん患者の在宅療養だけでなく、すべての介護に通じると思いますが、患者家族は辛さを発散し、休息する時間や場所が必要です。家族の側の事情で短期入院できるショートステイ、レスパイト入院といった制度もありますので、これを活用することもできます。

その場合、家族から患者に短期入院を勧めると、往々にして患者は「家族に邪魔者扱いされている」「迷惑をかけている」と考えてしまいます。家族の状況を見て、ケアマネジャーや医療者の側から、短期入院を提案していただくような関わり方をお願いしたいと思います。

患者を見送った後で、後悔や心の傷となって一生悔いることのないように、家族も周囲も、活用できる社会資源や、信頼できる相談者を早めの確保することが、円滑に在宅療養をすすめるコツのように思います。

掲載日:2015年11月30日
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