がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト
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「在宅療養ガイド」制作とプロジェクト創設にいたるまで 渡邊 清高さん

がんは特別な病気ではありません

このウェブサイトをご覧になったみなさんには、ご家族や友人など、身の回りの方たちの中にがんにかかっている人がいらっしゃることで、この情報にたどり着いた方が多くいらっしゃると思います。現在、日本人で一生のうちに何らかのがんにかかる人は、2人に1人という状況にあります。言い換えれば、がんは身近な病気で、限られた人だけがかかるという特別な病気ではなくなってきているということになります。

一方で、診断や治療の進歩により、治療成績が向上してきています。5つの主ながん(胃・大腸・肺・乳腺・肝臓)をはじめとして、多くのがん患者さんが治療を経て社会復帰するようになってきています。

患者必携 がんになったら手にとるガイド・わたしの療養手帳 患者必携 がんになったら手にとるガイド わたしの療養手帳 患者必携 がんになったら手にとるガイド外部リンク
わたしの療養手帳外部リンク
(国立がん研究センター がん情報サービス)

がん患者さんとご家族を支える情報の大切さ

がんという病気について正しく理解し、今後の治療や生活をどのように組み立てていくのか、こうしたことを考えていくためには「情報」がカギとなります。がんと診断された直後には、病気の不安を和らげながら、治療の方針やその後の療養の過ごし方を考えるための情報が必要です。2011年に国立がん研究センターがん対策情報センターが作成した「患者必携 がんになったら手にとるガイド」は、このような背景から作成されました。

このプロジェクトに私も参加し、患者さんが病気と向き合うために必要な情報や、医療者との対話のヒント、普段の生活の過ごし方のコツなどの役立つ情報を盛り込んだ「ガイド」、診察のときに知りたいことや疑問を書き留めて医療者との対話に活用する「わたしの療養手帳」を作成しました。

都道府県などの療養情報冊子一覧
都道府県などの療養情報冊子一覧外部リンク

(国立がん研究センター がん情報サービス)

「地域の療養情報」の提供も進んでいます

さらに全国の都道府県をはじめとした、地域の自治体や医療機関の方の手によって、身近な地域の医療機関や相談窓口、活用できる支援の仕組みをとりまとめた「地域の療養情報」が整備されてきています。冊子やウェブサイトを通して、行政や地域のがん診療連携拠点病院にあるがん相談支援センターなどで、現場の視点で情報がとりまとめられ、住み慣れた地域で安心して暮らしていくための役立つヒントをご覧いただけるようになってきています。

私は「ガイド」などの作成や、普及のモデルを提案する厚生労働省の研究班での活動を通して、行政・拠点病院・地域の医療機関・患者会・患者支援団体・企業・メディアなど、いろいろな立場の方が地域のネットワークづくりに関わる事例に触れてきました。

身近な地域での情報が整備されることは、そこに暮らす患者さん、ご家族、そして住民の方たちの安心感につながります。そして、自宅や福祉施設で療養生活を送るときの情報としても、家庭・職場・学校など、その地域で暮らす生活者の視点でまとめて提供されることは、これまでの生活のリズムや人間関係を保ちながら生活を続けることにつながると考えています。


患者さんとご家族の声から生まれた
「地域における緩和ケアと在宅療養情報プロジェクト」

がん患者さん向けのガイドブックの作成と、活用支援の取り組みで行ったアンケート調査やヒアリングを通して、患者さんやご家族のご意見に多く触れることができました。

確かにがんはてごわい病気で、患者さんの中には、根治が見込めない困難な病状であったり、治療のあとに再発したりすることがしばしばあります。その場合は、生活の見通しや人生設計の見直しを余儀なくされる状況に直面することになります。こうしたときにも役に立つ、在宅での療養を支える情報がないか、同じような体験をした患者さんとご家族はどのようにそうした状況と向き合ってきたのか、参考になる情報が欲しいというお声をいただきました。

こうしたご意見に応えるためには、治療だけでなく、治療後の生活や社会復帰、在宅での過ごし方や、在宅療養を支える仕組み、そして看取りの時期も含めて幅広い関係者がチームになって取り組むことが大切です。診断されて間もない時期とは異なり、病気の知識や治療の選択といった情報より、これから限られた時間をどう過ごすのか、医療者との関係を保ちながら、在宅療養を支える多くの専門職、例えば訪問看護師や介護士などとの関わりをどのようにつくっていくのかといったことが、この時期には重要になってきます。

こうしたことから、2012年に「地域における緩和ケアと療養支援情報プロジェクト」を立ち上げました。

がん医療フォーラムの様子
がん医療フォーラムの様子

「在宅療養に役立つ情報」を冊子にまとめました

2012年から3年にわたり「がん医療フォーラム」を毎年開催して、在宅療養に関わる医療・看護・介護関係者などと情報づくりの必要性を共有し、患者さんご家族との意見交換、議論を深めてきました。このプロジェクトでは、フォーラムを通して、イメージしにくい「がん患者さんの在宅での療養」について、具体的な事例や課題を共有し、地域で支える仕組みづくりが大切であることの共通認識を得てきました。

この内容を蓄積し、在宅療養の現場や地域のヒアリングを経て、全国で多くの方々に役立てていただけるように「ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド」を冊子としてまとめました。

最期に向かう時間を、患者さんご自身がどう過ごしたいのか、ご家族はどのように支え、周りの方はどのような支援ができるのかを考えていただくときに役立つ、幅広い情報を盛り込んだものです。

「ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド」の特徴

最期の時間を在宅で過ごす患者さんとご家族が必要とする情報は、多岐にわたります。このガイドを作成するにあたっては、医師・看護師・薬剤師などの医療者や、在宅療養を支える介護・福祉の専門家のほか、人文社会学の分野の専門家の方にも参加していただきました。

さらに、在宅での療養を支えたご家族の方に在宅療養について、役に立つ情報や安心につながるヒントをたくさんご提案いただきました。自宅や自宅に近い環境での療養に向けた準備、ご本人とのコミュニケーション、在宅での生活だからこそ得られる安心感、看取るときの想いなど、たくさんの手記をお寄せいただきました。

患者さんの病状の変化に伴って、ご本人もご家族もさまざまな葛藤を抱えることがあるかもしれません。そんなときには、同じような経験をもつご家族の体験談がとても参考になります。医療や介護の知識だけでなく、そうした心の「揺れ」についても十分配慮できるように、心のケアの大切さ、お互いの心を通わせるためのアドバイスなども盛り込みました。

ぜひご覧いただき、在宅で過ごすときのパートナーとしてお使いいただきたいと思います。


がん患者さんの療養支援情報「普及と活用」プロジェクトの始動

フォーラムでいただいたご意見やご提案のなかには、内容に関するものに加えて、どのように在宅についての情報をお伝えし、活用していくのかといったお声を多くいただきました。情報は「そこにある」ということではなく、「必要とする人の手に届き、活用される」ことで初めて役立つものになります。

そこで、2015年度から「地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト」を始めることにしました。情報が届いて、実際の療養を支える仕組みにつながるまでには、患者さんのご家族、相談や説明に関わる医療者、介護・福祉関係者、行政や地域住民の方など、さまざまな方が、お互いの役割を理解したうえで、よりよい療養支援を目指して連携していくことが大切だと考えています。

患者さんとご家族を含めたチーム医療という言葉が使われることが多くなってきましたが、在宅での療養では、地域でいろいろな職種や立場の方がチームとなって支える仕組みづくりがカギになると思います。このプロジェクトから在宅療養を支える情報が普及して、患者さんとご家族がこうした支援の仕組みと出会うきっかけになったり、地域でのネットワークづくりのきっかけになればと願っています。

がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報
がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト サイト

このウェブサイトの役割

より多くの患者さんとご家族に情報をご覧いただけるように、このウェブサイトで「ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド」の内容を公開することにしました。

見本として冊子を全国のがん診療連携拠点病院などの医療機関やがん相談支援センターに提供し、多くの患者さんのご家族、医療や介護・福祉を支える方にご活用いただきたいと考えています。

また、ウェブサイトではアンケートを行い、内容についてのご意見・ご提案に加えて、普及や活用に向けた共同プロジェクトについてもぜひお声をいただきたいと思います。そして、地域での在宅療養を考えるフォーラムの企画についても、このウェブサイトでぜひご紹介、ご提案いただきたいと考えています。

今後もいろいろな地域でフォーラムの開催、アンケートなどの機会を通して、患者さんやご家族、在宅療養に関わる方たちのお声をいただき、ガイドの内容を更新し、より充実していきたいと考えています。それぞれの地域でいろいろな職種の方が一堂に会して、具体的な課題や可能性を議論しながら、顔の見える関係づくり・連携を進めていくことが、がん患者さんを支える社会づくりの第一歩だと思います。

「在宅療養ガイド」やさまざまな地域の取り組みを、これからのがん患者さんとご家族を支える仕組みづくりのために、ぜひ役立てていただければと願っています。


掲載日:2015年10月15日
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