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がん医療フォーラム 2018 がんを知り、がんと共に生きる社会へ
【第2部】 パネルディスカッション
私たちが望む「がんと共に生きる社会」とは
がん患者団体からの報告

濱本 満紀さん(NPO法人大阪がんええナビ制作委員会理事長)
濱本 満紀さんの画像
濱本 満紀さん
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こんにちは。大阪から来ました、大阪がんええナビ外部リンク制作委員会の濱本です。皆さまには、スライドと並行して、小さいパンフレットの資料をご参照いただきながら、お話を聞いていただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

適切な情報の活用が希望につながる

私の演題は、「適切な情報の活用は患者さんの希望につながります。」です。私は、実は遺族なんです。2001年に、この「ええナビ制作委員会」の母体のうちの一つ、参加団体が産声をあげました。「NPO法人がんと共に生きる会外部リンク」といいます。「がんと共に生きる」というのは、当時2001年、私たちが初めて名乗ったのですけれども、非常に、実はひんしゅくを買ったのです。そのときは、「治すか、はたまそうでないか」2つのうちのどっちかであると。「がんと共に生きるなんて、何てせんえつなことを言うんだ」というふうに、非常に批判をされたものです。

私たちはがん難民でした。「がん難民」という言葉も、当時、うちの会の顧問医師が造語いたしまして、それが広まったものです。がん難民というのは、例えば、私たちは大阪ですけれども、全国から見放された患者が東京で集結してできたのが、「がんと共に生きる会」です。ですから私たちは、きっとその活動の中心にあるのは、自分たちが治療を求めてさまよったがん難民。そしてそれが、時を経て、私たちは何に困っているか、何を求めてさまよっているかというと、「情報」ではないかと。しかも、ないところに求めてさまようのではなく、翻弄(ほんろう)された情報の中でさまよっている、浮き沈みをしているということで、これを何とかしないといけないなと考えたわけです。

患者目線のがん情報提供を行っていきたい

私、大阪が地元ですので、同じような考え方を持っている大阪に重きを置いた患者会の人たちと一緒に、患者目線のがん情報提供を行っていきたいと思いました。大阪がんええナビのトップページです。 パンフレットのところに、参加団体の詳しい記述がありますのでご覧ください。

大阪がんええナビの活動として、公開講座やがん教育をしたり、がんカルタを取り合ったりなど、しっかりと記憶に、がんに対する情報を刻み付けていただくようにとか、弁護士や会計士、社会保険労務士、たくさんの人たちによる生活支援体制づくり、ミニがんサロンなどもやっています。主軸として、このインターネットサイト「大阪がんええナビ」について、お話を聞いていただければと思います。

役に立つ情報を、分かりやすく

これがパンフレットの見開きです。主に月間1万3,000から1万5,000を推移したアクセスをいただいていますが、その中で、このオリジナルコンテンツが、やはり人気があります。「がん診療スピード検索」というのは、がん診療連携拠点病院は指定要件を満たしているかどうか、現況調査報告を1年に1回国に提出しています。結構分厚いものなんですけれども。その情報をもとに、患者が、これを見たら役に立つと思われる、診療機能・緩和ケア体制・相談支援体制などを、大阪の65の病院で、ツークリックで比較検索できるようなオリジナルコンテンツを作りました。

がんの最新ニュースヘッドラインというのも構築しています。イベントのご案内では、いろんなサイト、団体、施設から「こんなイベントをしますよ」というニュースは入ってきても、それを一元的に見るというのはなかなか難しいものだと実感されていると思います。「大阪がんええナビ」では、大阪府下の情報を一挙に見られるようにしており、非常に人気があります。

慢性疾患を含めた情報を届ける新しい仕組み

公益財団法人正力厚生会から2017年の事業に指定していただきまして、新しいカテゴリーを作りました。「病床機能データ検索システム」といいます。これは大阪府下の全ての病院465施設、これはがん診療連携拠点病院以外の、さまざまな病気を診てくれる病院が検索できます。がんだけでなくさまざまな病気、精神疾患、糖尿病、循環器疾患、慢性病、そして難病を含めたデータを「病床機能報告データ」として、「これだけのレベルを保ってうちは診療している」ということを、2016年度以降、病院が届けるシステムができたのです。レセプト情報が基本になっていますので、素人目には難しい語句が出てきますが、それに対しての工夫はページをご覧ください。

このページの目的です。私たちの国の高齢化が進んでいくと、がん患者さんの中には、がん以外の疾患をその後患われたり、反対に、それまで慢性病や別の疾患を持っていた方ががんに罹患(りかん)される、こういったケースが非常に増えてきています。私どもに対しても、そういうご相談が多くなってきています。ということは、がん診療連携拠点病院以外の医療機関の情報も、やっぱり必要となりますと、今までのがん情報と、がん以外の情報を合わせて調べれば、患者さんはもとより、病病連携や退院支援などでも、地域の医療連携に活用してもらえないかなと思って作ったものです。

お手元の資料に操作情報が書いてあります。地域を検索して、調べたい項目。どういう機器があるか、どういうお医者さんがいるか、何人いるかということが分かります。がん、脳卒中、心筋梗塞、分娩、精神医療への対応状況、急性期後の在宅復帰、リハビリテーション、そして重度の障害児などの受け入れ状況。こういったことも見ることができます。

医療機能情報を検索して、分かりやすく

先ほど申し上げた難しい言葉を、用語説明として見ることができます。例えば、リハビリテーションの検索の項目から出る用語として、運動器リハ、呼吸器リハ、障害児リハ、がん患者リハビリテーション。これは何だろう。運動器リハの解説にカーソルを持ってくると、「がんの患者に対し、治療の過程で生じた筋力低下、障害などの改善を目的として行うリハです。値は、このリハを行った患者数です。」こうしたことが表示されるようになっています。簡便に手近に、そして分かりやすく検索をかけていくことができます。

検索例です。大阪市を選びました。大阪府の中から大阪市を選んで、医療内容に関する情報、手術・リハビリテーションの実施状況というところを、次に選んでみました。その中で、術中迅速病理組織標本作製・病理検査ができる件数、こういうのも見ることができます。リハビリテーションというのがこの下にあります。大阪市内では172件の施設があって、こういうふうに出てきます。リハビリテーション専門病院がこれだけと。「未確認」というところは、まだそこのところに未記載があるか、データが他の項目と整合性がない。こうした内容も大阪市のページに準拠しています。

私たちは、独善性をもって公平なデータをいじることはできません。それは肝に銘じています。ただ、分かりやすくするために語句を費やしたり、解説を加えたりしています。検索して分かりやすくご覧いただくことができます。

信頼できるがん情報を全国へ届ける

公開講座とか勉強会のことについての活動もあります。「難治性がんに挑む」、これは私たちの一つの、通年のテーマです。がん医療情報の見極め方、エビデンスに基づいた適切ながん医療情報の選択については、やはり非常に関心を集めました。定員200名のところを、大きく上回る400名以上の方からのお申し込みがありました。

これ、さっき「必勝」のはちまきを掛けながら、がんカルタ大会をやっております。大人も子どもも、手札の裏には、データに裏打ちされたエビデンス、治療に関する根拠が書かれてあり。それを説明しながら、取り札は絵札で、中学校から成人の方にまで活用していただいています。

実は、大阪府の職員さんにも呼ばれたのです。自分たちはがん対策をやっているけれども、「実はやってへんのや、検診を」というような方に呼ばれて、あのがんカルタをやったところ、1つの課で3人の方に初期のがんがみつかりました。幸か不幸かというところですけれども、「幸いにして」と言ってくださいました。早期発見につながったこともあります。

このフォーラムのロビーで、このように実際に私どもの「大阪がんええナビ」を体験していただくブースをつくっています。病床機能報告データと同時に、今までご説明があった「がん情報サービス」でありますとか、さまざまな情報サイトを全て「ええナビ」にはリンクしています。そちらも併せて、ぜひ体験してお帰りになってください。私たちは、いつでもどこでもパソコン1台背負って皆さまの町へ行きます。「大阪がんええナビ」といい、入り口は大阪ですが、その奥には世界の情報を広げておりますので、どうぞご活用くださいますよう、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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掲載日:2019年6月24日
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