がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト
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がん医療フォーラム 岩手 2016/気仙がんを学ぶ市民講座
【基調講演】

がん患者さんとご家族を支える情報づくりと地域づくり
渡邊 清高さん(帝京大学医学部内科学講座 准教授/腫瘍内科・がん情報)

渡邊 清高さん
渡邊 清高さん
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がん患者さんを支える社会に向けた発想の転換

人口の高齢化を背景に、昭和56(1981)年に日本人の死亡原因の1位ががんになり、その数は年々増えています。最新のデータでは年間36万人の方ががんで亡くなり(2014年)、1年間に86万人の方が新しくがんと診断される(2012年)という状況です。この数字は今後も増え続けていくだろうと見込まれています。

一生のうちに何らかのがんにかかるリスクのことを「生涯累計発がんリスク」といいますが、日本人では2人に1人です。正確には男性は63%、女性は47%の方が何らかのがんにかかるといわれています(2012年データ)。ということは、がんにかかった方が特別だとか、限られた方ががんにかかるということではありません。がんになることを前提にして、ご自身でどう備えていくのか、身近な方ががんといわれたときにどう支えていくのかを考える、そういう発想の転換が必要だと思います。

がん医療の進歩で生まれた新しい課題

80歳代のある患者さんの例をご紹介します。この方は肺がんのステージ(病期)IVで、息苦しい、咳が多いなどの症状があり、入院されたころはベッドで起き上がるのもままならない状態でした。この方は抗がん剤治療をしたことで、息苦しさも消えました。退院されるときは、ご自分で歩いて自宅に帰り、普段どおりの生活に戻られました。

診断や治療の視点であれば「これでよかった」という話になります。一方で、この方が自宅に帰られた後、仕事をするかどうか、今までの生活を取り戻されるかどうか、あるいは以前のように食事を食べられるかどうか。治療の内容だけでなく、普段の生活についても考えるようになってきています。そういった意味で、患者さんの生活の視点でとらえていくことが大事だということです。

がんの診断と治療が進歩して、近年では胃がん、大腸がん、乳がんでは5年生存率が70%を超えています。がんと診断されても、それがすぐに命をおびやかすのではなく、治療を続けながら、あるいは再発の不安と向き合いながら生活していらっしゃる方が増えています。治療をしてよかった、長く生きながらえてよかった、という視点に加えて、その方が社会に復帰してどう過ごされるのか。患者さんとご家族をどう支えていくのかという考え方が重要になってきます。

言い換えれば、がんの医療が進歩したことによって、患者さんとご家族をどう支えていくのかという問題が新たに提起されることになりました。これに対してどう解決策を考えていくのかが、新たな課題になってきていると思います。

患者さんとご家族のための情報づくり

私は2013年1月に第1回「気仙がんを学ぶ市民講座」でお話をさせていただいたときに、国立がん研究センターがん対策情報センターの「がん情報サービス外部リンク」といった、信頼できるインターネット情報があることをご紹介しました。当時、がんと診断されたときにまず読んでいただきたい『患者必携 がんになったら手にとるガイド』などのがん情報冊子の作成に携わりました。がんについてぜひ知っていただきたい情報として、患者さんの視点で知りたい情報、現場の医療スタッフの視点で患者さんに知っていただきたい情報をとりまとめて本にしたわけです。

『いわてのがん療養サポートブック』のように、患者さんが困ったときに相談できる身近な窓口など、お住まいの地域の情報があると安心です。地域の療養資源の情報は、がんの病気や治療といった一般的な情報とセットで使われることで、その地域の方が安心して暮らせるために役立つものになります。情報が実際に広がっていって、本当に役に立つ情報になる。情報が、血の通った情報になることが大切だと考えています。地域ごとの療養情報はこれまでに、更新されたものも含めて全国で80冊近く作成されています。いろいろな都道府県で現場の医療関係者、ソーシャルワーカー、患者さん、ご家族、ご遺族の方たちのご意見を踏まえながら、こういった情報づくりが進んでいます。

今回のテーマでもある、在宅での療養をどのようにすればいいかを考えるときに、地域の情報は鍵になります。そうしたことから、2015年からウェブサイト(がんの在宅療養)で、在宅での療養に必要なことを紹介させていただくようになりました。

また『ご家族のための 患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド』をつくりました。本としても購入していただけますし、インターネットをご利用の方はウェブサイトでご覧いただけます。内容としては、在宅療養の心構え、看取りの意識、人生の最期をどう支えていくのか、お別れの時期にどう寄り添っていくのかなど、患者さんを支えるご家族にとって役立つ情報、ぜひ知っていただきたいことをまとめた本です。会話形式にして、イラストをたくさん入れるなど、親しみやすく、わかりやすいようにつくっていますので、ぜひご覧いただければと思います。
講演の様子
講演の様子

情報を届け、支えるチームづくりに役立てる

患者さんやご家族に向けた情報は、その内容も大切ですが、情報の生かし方も重要です。この点について、作成に関わってくださった方たちなどから、いろいろなご提案をいただきました。どういうところでこの情報が使えるのか、どこで読めるのか。あるいは心の準備をしたいときに、どのようにこの情報と向き合えばいいのか、などです。がんの治療をする病院だけでなく、在宅のクリニック、薬局、訪問看護ステーション、いろいろなところで、こういった情報にアクセスできる機会があるといいのではないかというご提案もいただきました。

今回のフォーラムに先がけて、5月に在宅医療に関わる方たちにお集まりいただいて研修会を実施させていただきました。気仙地域の在宅医療を支える、あるいはがん治療を実践される、いろいろな立場、職種の方々が一緒にグループワークをして、学び合いました。お互いの立場、垣根を越えるような形で地域の課題を共有したり、解決のための知恵を出し合ったりして、地域で患者さんとご家族を支えていくためのコミュニケーションをとることができました。今後も顔の見える関係づくりを広げていきたいということが、研修会の結論となりました。

さまざまな職種の方が患者さんと一緒にがんに向き合い、患者さんとご家族を支えていくのですが、患者さんが困っていること、患者さんの願いや思いを踏まえて、地域の実情に応じてチームづくりの様子は異なってくると思います。患者さんとご家族と一緒にチームづくりをする、そのきっかけになればということで、この市民講座を企画させていただきました。今日は、いろいろな専門分野の方たちにお話しいただきます。みなさんが知りたいこと、わからないこと、感じられていることなどを質問票やアンケートに書いていただければと思います。ご参加いただいた方からのご意見やご提案は、これからの情報づくりと普及に向けた取り組みの参考として活用させていただきます。

掲載日:2016年12月20日
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