がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト
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がんの在宅療養ガイド 研修会 沖縄 2016
【リレートーク & ワークショップ】がん患者さんが安心してわが家で過ごすために

<テーマ1>
在宅での療養を始める 意思決定とコミュニケーション

第1章 在宅での療養を始める
コーディネーター: 島袋 恭子さん(那覇市立病院 総合相談センター 医療ソーシャルワーカー)
荷川取 尚樹さん(花あかり居宅介護支援事業所 介護支援専門員)
司会:趣旨説明と進め方
帝京大学医学部内科学講座 准教授 渡邊 清高さん

在宅や連携に関する研修会の中には講演を聴くだけという形式もありますが、今回はいろいろな職種の方にお集まりいただくのに、それだけではもったいないと思い、企画をご一緒した沖縄県在宅医療人材育成・質の向上センターの皆さまとご相談し、ワークショップを組み合わせて意見交換ができる形を考えました。

在宅の場合、患者さんやご家族が能動的に動かれないと、支援がしにくいという面があると思います。一方で、実際の支援の場では、うまくいっていることは共有できても、困っていることや苦労していることは、異なる職種の間では話しづらい点があるかもしれません。

ワークショップでは、「ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド」の章立てに沿ってテーマを4つに分け、ファシリテーターの方から内容と課題をお話しいただきます。その後に、各グループでディスカッションをして課題を共有し、提案などをまとめていただきます。
リレートーク
那覇市立病院 総合相談センター 医療ソーシャルワーカー 島袋 恭子さん

本人と家族の心構えと準備

第1章は、在宅の療養を始める際の、「意思決定とコミュニケーション」というテーマでまとめられています。私はこの章の前半「本人と家族の心構えと準備」の項目を担当させていただきます。

ご家族の心の準備は、相談できる話し相手を見つけることから始まります。なんでも一人で抱え込む必要はないこと、家族内で窓口を決めておくこと、親族間で情報や方針を共有すること、支援者となってくれる友人・知人を見つけておくことが大切です。
島袋 恭子さん
島袋 恭子さん

患者さん本人とのコミュニケーション

療養について考えるときに大事なことは、患者さん本人とのコミュニケーションです。ここでは私が関わった事例を交えながら、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。「在宅療養ガイド」では、患者さんとのコミュニケーションのポイントを4つあげています。1つ目は、療養生活や治療・ケアの方針などについて本人の意向を確認すること、2つ目は、一番大切にしたいことを本人と家族が共有することです。このことの大切さを実感した事例についてお話しさせていただきます。

Aさんは80歳代前半で肺がんの末期、奥様と2人暮らしの方でした。私が医療ソーシャルワーカーとして初めて在宅支援を行った患者さんです。病室を訪ねると、いつもご夫婦で楽しかった思い出や家族の話などをされており、穏やかな時間が流れていました。その会話の中で、ご夫婦の大切にしてこられたことや、これからの過ごし方についての希望を聴かせていただいたことを、今でも鮮明に覚えています。ご夫婦の会話はいつも互いに対する心遣いがあふれていました。この経験から、予後が厳しい中でも本人とご家族が日常の会話を自然に行う中で、大切にしてきた価値観や、今後の方向性を一緒に話し合える場の大切さを学びました。

本人の不安や疑問を受けとめ、つらい感情も共有する

ポイントの3つ目は、本人の不安や疑問を受けとめ、つらい感情も共有することです。このことについても事例をお話させていただきます。

Bさんは50歳代後半の女性で、乳がんで骨転移があり、夫と2人暮らしの方でした。私は入院当初より関わり、病気の不安や両下肢の麻痺が出現したショックに対する心理的サポート、QOLを高めるために趣味に対する支援などを行っていました。Bさんによると、夫は仕事が忙しく、家事や役所の手続きなど妻に任せきりで、家のことは何ひとつわからない状況ということでした。そのためご本人は「家に帰りたい」という強い希望がありながらも、そのことを夫に伝えられないままでいました。

そんな中、Bさんから「夫の本当の気持ちを聞いてほしい」という依頼がありました。夫と面接し気持ちを確認すると「家事もやったことがないし、介護なんて…。まったく自信はありません…。連れて帰って一緒に暮らしたい、という思いはあるのですが…。」との言葉がありました。本人に対する夫の思いは十分に伝わってきたため、Bさんにそのことを伝えると「連れて帰りたい気持ちはあると言ってくれていたの?その言葉を聴けただけで十分うれしいです…。」と涙を流されました。

後日主治医より「できなかったらいつでも帰ってきていいので、サービスを入れて家でやってみませんか?」と提案があり、夫は自宅への退院を決心されました。訪問看護やホームヘルパーの協力のもと、夫は家事や介護を献身的に行い、在宅生活が実現しました。

終末期の患者さん、ご家族は互いに対する遠慮で本音を言い合えないことがあります。支援チームの私たちが、代弁機能を果たす事で、本人と家族の思いがつながることもあります。患者さんに必要な時期に活用してもらえるよう、なるべく早い段階から本人の思いに沿った支援を行うことが大事だと感じます。

家族の考えを伝えることは重要だが、押し付けにならないように気をつける

ポイントの4つめは、家族の考えを伝えることは重要だが、押し付けにならないよう気をつけること、とあります。

この点で難しいと感じることは、ご家族が患者さんを落ち込ませたくない、という一心で、患者さんに代わって選択する場面があることです。病名のみ告知されており、予後を伝えられていない患者さんの場合、「家に帰ろう」と伝えることで、「本人に予後が短いことを悟られてしまうのでは」という不安で、ご家族が本人に向き合えないこともあります。

ご家族にとって、患者さんの病状の進行は辛い現実であり、不安はもっともだと思います。「患者さん本人の自己決定を尊重する事の大切さ」を、ご家族と共有できるような働きかけが必要だと思います。在宅療養ガイドの「効果的なコミュニケーションを行うために」というコラムに、患者さんに対する効果的なコミュニケーションをとるための具体的な方法が書かれています。ご家族が患者さんと向きあう時の参考になると思います。

支援チームもコミュニケーションの方法を学ぶ

急性期を担う病院は、治療が終了したら、これからの方向性を決定する大事な場です。主治医をはじめチームのひとりひとりが、患者さんの思いをタイムリーにキャッチし、共有し意思決定支援を行っていけるよう、コミュニケーションの方法を学んでいきたいと思います。

後ほどのディスカッションでは、「本人の思いが聞けないときの働きかけの方法」について、皆さんのご意見を聴かせていただきたいと思います。

続いては在宅の療養環境を整え、手続きや相談を進めていく段階です。具体的な準備について、ケアマネジャーの荷川取さんよりお話ししてもらいます。

花あかり居宅介護支援事業所 介護支援専門員 荷川取 尚樹さん

在宅での療養環境を整えるには

一緒に療養を支えるパートナーを探す」ためのポイントが4つ挙げられています。

在宅支援チームとの関係づくりが、在宅療養の質を左右する
地域の在宅支援チームと出会うために、病院の相談窓口や地域連携室を利用して情報を収集する
まず支援チームの鍵となる在宅医とケアマネジャーを探す
在宅医やケアマネジャーに事前によく相談してから、依頼するかどうかを決める
荷川取 尚樹さん
荷川取 尚樹さん

在宅支援チームとの関係づくり

これについて、ケアマネジャーとして感じていることをお話します。がん患者さん、あるいは難病の方は退院する段階で、病院から介護や在宅医療などについての説明を受けたり、冊子をもらったりしています。しかし、初めての経験ということもあって、ほとんどの方が混乱しています。何をしたらいいのかわからない、手続きの書類はどこの窓口に行けばいいのかわからないというのが現状ではないかと思います。改めてそうしたことを説明する必要があります。

チームとして関わる訪問看護師さんやヘルパーさんなどが、患者さんやご家族が手続きなどを理解していないといった情報をキャッチしたら、ケアマネジャーやソーシャルワーカーに伝えてください。実際に、必要な申請がされていなかったために非常にばたばたしたこともありました。在宅支援チームと出会うといっても、患者さんやご家族が支援チームを選べるわけではありません。多くの場合、病院からケアマネジャーや訪問診療の先生につなぐなどして、在宅の支援に引き継がれているのが現状ではないかと思います。

実際に患者さんは在宅の先生がどういう方なのか、紹介されたケアマネジャーがきちんとやってくれる人なのか、慣れているのか、経験が浅いのかというようなことは、わかりません。退院時のカンファレンスなどが十分であればいいのですが、そういう場合ばかりではありません。事前によく相談できずに、自宅に帰ってきた方もいると思います。そのあたりのフォローも必要ではないかと思います。

在宅支援チームとの関わり方のコツ

ここでのポイントを一つずつ考えてみたいと思います。

・患者さん本人も家族も在宅支援チームの一員
家族と支援チームだけで話を進めてしまうこともあるのではないかと感じています。告知の問題、患者さんに予後をきちんと伝えているかどうかによっても、話し合えることが限られてしまうなど、とても難しいところだと思います。

最近、在宅療養の方から「ケアマネジャーさんと話したことを、主治医や訪問看護師さんなどにも私が伝えなければいけないのですか」と相談されて、「私が聞いたことは伝えます」とお話ししました。同じことを繰り返し説明することを苦痛に感じられるようでした。直接、ご本人の口から伝えられるのならば、そのほうが伝わりやすいことも多いかと思いますが、こうした判断は、その場の状況やご本人の状態によって変わってくるだろうと思います。

・在宅支援チームとの信頼関係を築く
ケアマネジャーや訪問診療・看護の担い手を、自宅に近いことを条件として選ぶ場合もあるかもしれませんが、それだけで決めるのは難しいとも思います。チームに関わる人たちをどのように選んでいくかは、ポイントになるでしょう。特殊寝台、特にマットレスの固さなどをとても気にする方がいらっしゃいました。「マットレスはレンタルなので変更できます」と伝えますが、「病気の進行に応じて変える」という説明は難しいです。病状が進んでいくことをケアマネジャーなどの第三者からいわれて、ショックを受ける方もいらっしゃいます。「病状の進行」といった言葉を使うタイミングや使い方、説明の仕方をしっかり考えておかないと、大きなショックを与えてしまうのではないかと気にしながらやっています。

・サポートしてほしいことを明確に伝える
・家族自身の悩みや不安も支援チームに相談する
信頼関係をしっかりつくらないと、患者さんやご家族の悩みなどを聞くことはできないと思います。ケアマネジャーはそれほど頻繁に患者さんを訪問するわけではないので、よく話を聞かれていている看護師さんやヘルパーさんに、患者さんやご家族から聞いたことの情報をいただいています。チームの中で話を聞ける人が患者さんやご家族との関係をつくり、当事者の思いや気持ちを吸い上げて、チームの人たちに伝えていくことが大事ではないかと感じています。

本人と家族のコミュニケーションの工夫

言葉だけではなく、手を添えるなど、側にいるだけでも十分にコミュニケーションがとれるのが家族ではないかと思います。一方で、関係がぎくしゃくしていたり、病気に対する理解がなかなかできない方が家族にいたりすると、本人とのコミュニケーションも難しくなります。

経済的な事情で、病院ではなく家にいるという方、サービスそのものを削ってしまっている方もいらっしゃいます。そういった家庭への支援のあり方も難しいところです。生活保護のような制度が活用できる方であれば対応できますが、そういった制度が活用できない方もいらっしゃるので、難しいと感じることもあります。

こまめな相談と連絡がポイント

患者さん、ご家族の思いや状態を共有するための担当者会議があります。実際にはケアマネジャーは訪問診療をする先生と話がしづらいところがあります。医療面での計画をケアプランにどのように盛り込んだらいいのか悩むケアマネジャーもいます。ケアプラン作成の難しさ、あるいは担当者会議を開くことの難しさもあるのではないか。担当者会議をどのように活用しているか、みなさんのご意見を伺いたいと思います。

チーム内のコミュニケーションについては、連絡ノートを活用しているほか、最近では携帯電話やスマートフォンを使って情報を共有している例も聞きます。ご本人やご家族には、チームに対して、気になることをメモに残していただくように伝えています。患者さん、ご家族を含めたチーム全員で、情報を伝えていくことが大事ではないかと思っています。

患者さんもご家族も、病状が進んで気持ちが二転三転してしまうことはあると思います。家にいたいと思っていたけれど、状態が悪くなって病院のほうが安心だと思うようになることもあります。私は「家族だからできることをやってください」と伝えるようにしています。写真を撮ることをためらうご家族もいるので、亡くなった後に、その方の思い出話をできるだろうと思い、写真を撮ってご家族に提供したりしています。
ワークショップ 意思決定をどう支えるか
コーディネーター:島袋 恭子さん 荷川取 尚樹さん

難しいケースとして、次の点が挙げられます。ご本人が告知されているかわからないときのほか、認知症であったり、例えばせん妄があったりして、意思決定できない中での在宅療養への意向を確かめること。ご家族と患者さんの気持ちにずれがある場合。ご家族としては常に状況を全部把握していて、看取りの段階で本人を家に連れ帰られたのだが、患者さん本人だけが状況を知らない場合の在宅療養をどのようにするのか。こうした場合に「在宅療養ガイド」を参考にしたらよいのではないかと思いました。

患者さんが意思決定をなかなかできない場合は、本人の気持ちを聞けるまで待つのがとても重要です。でも中には待てる時間が少ない、在宅になって1週間以内で亡くなるなど、本人の気持ちを聞けない場合もあります。そういうときには、本人に代わるのはキーパーソンでしょう。しかしキーパーソンでない人に、本人が自分の思いを告げていることもあるので、そういった人たちとの関係性を周囲からつないでいくなど、本人の思っていることを探り続けていくことも重要ではないかと思いました。

担当者会議を活用する

担当者会議は患者さんに関わるすべての職種の人たちが情報を共有する上で重要だということで一致しました。問題になるのは、担当者会議をいつ、誰が招集するのか、今ひとつ不明なところがあることです。ある程度、時間に余裕がある場合はいいのですが、ケアマネジャーが決まっていないまま退院してしまった患者さんもいて、医療や看護・介護に関わるスタッフが混乱する場合もあります。担当者会議はスタッフが集まりやすい、土曜日の午後などを利用しているという意見も出ました。
まとめ 在宅での療養を始める
在宅療養ガイド」の第1章のまとめとして、次の2点が挙げられています。

本人とご家族の希望や思いを共有することが大切です。そのために、小さなことでも率直に話し合える関係をつくっていきましょう。
これからの当面の目標を定めたり、心配なことを具体的にしたりして、できるところから周囲のスタッフの助言や支援を受けながら準備を進めていきましょう。

各グループで話し合って、いろいろな問題点などが出てきたと思います。今回の研修は「在宅療養ガイド」を広めていくことを目的にしています。このガイドを使うことで、多職種の間で今まで話しにくかったことが話しやすくなることを、どんどん伝えていくことが大事だろうと思います。

掲載日:2016年4月11日
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